第40話 ご褒美は…………

「ご褒美、決めましょうか?」


「今、一緒にいられるのが、十分ご褒美ですよ?」


「私からすれば当たり前すぎて、全然足りませんから。何か欲しい物、ありませんか?」


正面から見上げられて、目線で何かを訴えるように問い掛けられた。


「では、新作の挿絵を、いっぱい上げて下さい。」


「もう、全部仕上げました。」


「キャラクター作りが全然なので、手伝ってもらえますか?」


「創作活動から離れてもらえませんか?」


ご褒美として欲しい『もの』はあるけれど、それは、今、貰う訳にはいかない物だからね。


真剣な表情に、逃げたり誤魔化したりはもう出来ないかなと思い始めた所で、由紀さんはスマホを取り出して操作し始めた。


操作し終わったのか、再び僕を見上げながら、ニッコリと満面の、極上の笑みで画面を見せてきて、


「ご褒美は…………………………………」



※※※※※※※※※※



「創作活動から離れてもらえませんか?」


聡一郎さんから私が望む答えが得られそうもないので、非常手段です。強制的に答えを出させてみせましょうか。

ポシェットからスマホを取り出して、下調べしてある画面を呼び出して、予約確定画面まで進めます。


「ご褒美は…………………………………」


聡一郎さんを見上げながら、画面を向けて差し出します。


「………………………………デイユースプランの、予約、ですか?」


ここから一駅の始発駅から歩いて少しの、有名なシティホテルのデイユースプランの予約画面。


暫し思案していた聡一郎さんは、意味がわかってくれたのか、


「僕達はまだお見合いのお返事もしてませんから、マナー違反ですよ?」


予想通りなお返事だったので、


「問題ありませんよ?『ご褒美』の約束をしたのは、『由紀』ではなくて『ユーちゃん』ですから。」


今、鏡で私のお顔を見られたら、人生最高な笑顔なんじやないかなと想像しながら、『トーさん』を見上げます。


「………………………………わかりました。ご褒美に、『ユーちゃん』を、ください。」


勝った!、と後で考えたら良くわからない事を思いながら予約を確定してから、聡一郎さんに右手を差し出しました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る