第15話 お見合い ②
「お久しぶりです、今日は仲人を務めさせていただきます。よろしくお願いします。」
「お久しぶりです。改めてこちらが娘の由紀です。よろしくお願いします。」
昨夜からの『トーさんと会える』という事からの興奮状態を、やっと冷ましてから臨んだお見合いの席。
個室のテーブル席で、私と母は、初さんと挨拶を交してから釣書を渡された。
「急な話を受けて頂き、ありがとうございます。早速ですが、目を通しておいて下さい。先方も隣の個室に控えていて、これから貴方様の釣書に目を通していただきます。」
……………………砥部聡一郎、27歳。
職業、会社員、専門商社勤務。……………
母と二人、一通り目を通し終えたところで、
「初様、私はお見合いは初めてなもので、今日の手順というか、流れを教えていただけますか?」
「いつも通りに初さんでよろしくてよ?
この後、このレストランのテーブルへご案内します。最初のご挨拶が先方のお父様からありますので、お母様がお応えしてから始めますのでお願いします。
挨拶の後、貴方様の釣書の内容を貴方様の言葉で伝えて下さい。相手様の釣書の内容で質問があれば聞いていただいて結構です。同じく、相手様からの質問には誠実にお答え願います。」
新電波塔タウンの隣のビルのレストラン。
結良と来た、あの、レストランだった。
お見合いや商談の控室に使われる個室で、私と母は緊張しながら初さんの説明を聞いていた。
「歓談しながら食事の後、お見合いの御二人だけでお過ごしいただきます。ここでお茶でも移動して『お散歩』でも、相手様に主導していただくようにお願いしておきますので、従っていただきたく願います。
何れにしても、5時位までには由紀様をお返しするように話しておきますので、お送りしてもらわずに、この場でお別れして大丈夫です。
万一、相手様をお気に召さなくてもその場でお返事するのはご遠慮下さい。その場でお断りするのはマナーに反しますのでご承知願います。交際開始前に相手様と直接連絡を取るのも同様です。どうしても合わなそうでしたら、私を通してくださるよう願います。私の連絡先はこちらです。」
初さんから名刺を渡され、母と顔を見合わせた。
「わかりました。相手様の用意が整ったら始めて下さい。」
私が母の言葉にうなずいたら、
「では、後ほどお呼びしますのでこのままお待ち下さい。」
しばらくすると、初さんがウェイターを連れて来て、促された私たちはテーブルへと案内された。
通路を歩きながら、小声で、
「母さん、先方も父子家庭なのね?」
「そうね。うちは、母子家庭だけどね。」
「私のお相手を間違って気に入ったとか言って取らないでね?」
「あなたこそ、父親の方が気に入ったとか言い出さないでね?」
「「フフッ、ふふふふふふっ、」」
……………………案内されたのは、先日結良と来た時に、男性二人連れが居た席だった。
改めて廻りを見渡すと、特等席だったんだな〜と実感した。男性二人で来る場所じゃ無いわね。あの二人、当日は浮きまくってたわよね?
「……………………なにか、とても楽しそうですね?お連れしましたよ?」
背後から案内されて来たので、気が付かなかったのか楽しそうに過ごしていた今日のお相手様親子。
仲が良さそうなのは、いいことだよね?
ウェイターに促されて対面に掛けて、お二人を見て、聡一郎さんと目があって、息が、詰まって、しまった。
初対面なのに、あ〜、私は、この人と、結婚するんだと、『わかって』、しまったから。
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