第8話「罪の祝い」

悪なき世界に平和はない

ドレドゲン・デトロスト著 正しい罪より引用


「なぁエドモンド」

「なんでしょう」

「君は生きるために何をしている」

「仕事へ行ったり、家事をしたり、当たり前のことをしてますね」

「そうか」


「何か思うところがあるのですか」

「最近、生きても脱力感に苛まれているのさ」

「運動でもしたらどうです」

「いや精神衛生的な問題だと思うのさ」


「精神ですか」

「ああ、」

「では、悪い事をしましょう」

「どういう事だ?」


「人とは、真面目なほど苦しみを抱えるんです」

「だが悪い事って、それはイケナイことだろ」

「そんな大それた事をする訳ではないですよ」


「そうか」

「ええ、言ってみれば童心に帰るといった感じです」

「で、何をするんだ」


「お店に誕生日だと、特別メニューをだしてくれる場所があるんです」

「つまり?」

「察しがつきませんか?」


「まさか、誕生日だと偽って、祝ってもらうのか」

「そうです!」


「だがそれは・・・」

「大丈夫ですよ」

「本当か?」

「ええ」


「着きましたね」

「言われるがまま付いてきてしまったが」

「安心してください、いざとなったら私が懲役になって贖いますから」

「いや、ますます怖いは」


お誕生日おめでとうございます!!!

「あ、実は、私・・・」

心配するな兄ちゃん!あんたが誕生日じゃないのは知ってるよ!

「え?」

「フフ」

「図ったなエドモンド!」

「先生のどうしようもない顔、愛らしかったですよ」

「まったく、君は底知れないね」


兄ちゃん!ケーキ食べていいぞ!

「え?ケーキなんて、そんなもったいないもの・・・」

ええよええよ!うちの店は笑顔が何よりの利益だからね!!

「本当にありがとうございます」

そんなかしこまっちゃって、兄ちゃんはあれだね、真面目な人だ!

「そう見えますか?」

ああ、だがな、大人になっても大人の面倒を見てくれる奴はいる、だから安心してハメ外していいんだぜ!

「う。。」

「先生!!」

「久々に安心して涙。が。。店長さん、ありがとうございます。ケーキ頂きます」

おお!た~んと食え!

「先生、私は一生面倒見ますよ」

「君は、まったく。。。」

「ふふ、鼻水垂れてますよ」

「感動の渦中なんだ。。。拭いたらもったいないだろ」

「相変わらず、哲学的ですね。ふふ」

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