春季リーグ戦
VS港経済大学
第13話
四月某日 川口市某球場。
人工芝の綺麗な球場だ。外野にはラッキーゾーンがあり、フェンスを越えなくともあそこを越えればホームランになる。土のグラウンドに比べると芝のグラウンドは、イレギュラーが少ないこともあり打たせて取るピッチングスタイルのりかこに有利な環境だ。しかし、相手チームの予想に反しマウンドに上がるのは久留実だった。
「昨日も言ったように港経大のピッチャー西口さんは、ストレートよりもゆるい変化球でコーナーをつく軟投派のピッチャーですぅ。緩い変化球は一拍ためてひきつけて逆方向に打てば問題ありませーん」
整列前の円陣で真咲の激が飛ぶ。審判たちがお互いに挨拶を終え懐かしい緊張感が伝わってくる。
赤を基調としたユニフォームが整列する。
「というわけでくるみちゃん。三振ばんばんよろしく」
久留美の横に並んだあんこが背中を叩いて言った。
「集合」のかけ声と共に両チームが向かい合いキャプテン同士が握手を交わして健闘を称えあう。
お互いに礼を交わして勢いよく自陣ベンチに戻った。
電光掲示板にスターティングメンバーが発表されるとバックネット裏に陣取った各大学の偵察にきていた選手たちがざわつき始める。
光栄大学
一番センター 新庄
二番セカンド 安城
三番ショート 佐藤
四番キャッチャー 早乙女
五番レフト 織部
六番サード 鈴木
七番ファースト 立花
八番ピッチャー 咲坂
九番ライト 堀越
データのない選手が二人もスタメンで、絶対的エースのりかこが先発ではないからだ。
「くるみちゃん緊張してんの?」
「えっ……それはしますよぉ」
「じゃあさぼくが初々しいくるみちゃんのために先制点のおぜん立てをしちゃうにゃー」
そう言って久留美の頭をポンと叩いた詩音は笑いながらゆっくりと打席に向かった。
「詩音さん、先頭出塁お願いしまーす」
あんこがそう言うと肩に乗せたバットを少し上げて左打席に入った。
主審の腕が上がる。
「プレイ!」
負けられない初戦が始まった。
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