38、また通ってみては

 

 折り鶴は、ちゃんと仕事を果たした。

 少しして、キヨとウサ子は折り鶴を持って「お呼びでしょうか」とやってきたのだ。


「桜子さんは天才だな! すごい、すごいっ」


 京也は全力で成功を喜んで、桜子に自信をつけてくれた。


「京也様やみなさまのおかげです、ほんとうにありがとうございます……!」


(もっと練習して、私はこの力を親しい人々や、世の中のために役立てたい!)


 桜子は、そう思った。


 キヨやウサ子が来たところで、京也は「本日はこれくらいにしようか」と終わりを告げた。


 キヨは自室に戻った桜子に付いてきて、煎茶を出してくれた。

 

「折り鶴が生き物みたいで、可愛いですねえ」

「ずっと動かし続けるのは大変みたい。もう動かなくなっちゃった」

 

 桜子はテーブルの上に折り鶴を置いて指先で撫でてから、陰陽五行について書かれた教本を本棚に入れた。

 本棚には高等学校の教科書が並んでいて、なんとなく手が伸びる。


 教科書を開くと、懐かしい気分になる。

 教科書は、くたびれていてページがくたくただ。最初は折り目もない新品だった。

 1ページ1ページ、1日1日、桜子が持ち歩いて読みこんで、くたくたになったのだ。


「あるじさま、おべんきょうがおすき」


 もみじの無邪気な声に、桜子は頷いた。


「せっかくですから、また通ってみては」


 キヨが勧めてくれる。


「……行ってみようかな」


 桜子は、帝立高等学校に再び通うことにした。

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