第32話賞金首
グラハムビーチから元の街に帰り、クエストの報告をした。
「ミナト様、アオバ様パーティのご活躍により、【海浜清掃】が大幅に捗ったと報告を受けております。冒険者ランクがお二人ともCに、パーティランクがBに特進いたしました。上席が是非ご挨拶をしたいとのことですので、奥にお進みください」
ゲームにはない展開に、俺は目を丸くする。
「あのエビを倒したおかげかな」
「たぶんそうでしょう。苦戦の元凶でしたから」
受付嬢についていくと、奥の応接室のようなところへ連れていかれた。
「支部長。ミナト様とアオバ様です」
「どうぞ」
声が聞こえて、受付嬢は扉を開けて入室を促す。
中で待っていたのは、青ちゃんよりやや年上くらいの綺麗な女性だった。
パリっとしたスーツを着込み、スカートからはタイツに包まれた足を覗かせている。
「二人の活躍は聞いてるわ。ギルドに大きく貢献してくれているみたいで、いつもありがとう。一言お礼を言いたくて」
感じのいいオトナの女性と言った様子で、俺たちとそれぞれ握手を交わす。
「できそうなことをやっているだけなので、お礼だなんて」
「【盗賊】と【呪術使い】なのでしょう? 足手まとい――失礼、あまり活躍どころが少ない職業なのに、適正外のクエストをこなして帰ってくるのだから、話題にもなるわ」
挨拶もそこそこに終えると、クエストの話や戦闘の話をした。ただ本当に珍しいからしゃべってみたい、という雰囲気で、特別なアイテムをくれるようなイベントは起きなかった。
「マジでただの挨拶かよ……」
ぼそっと俺はグチってしまう。
こういうの、アイテムもらえるのが定番なんだけどな。
「特進するように推薦したのは私なの。……パーティランクはBでしょう? そしたら、バウンティクエストができるようになるわ。そっちでの活躍も、期待してる。頑張ってちょうだい」
「ああ、はい」
ただのおしゃべりだとわかると、俺の対応もおざなりになっていった。
綺麗な人だから見ている分にはいいけど、偉い人だからか、上から目線がちょくちょく気になる。
ようやく解放されると、青ちゃんが尋ねた。
「バウンティクエストって何?」
「一定ランクに達しないとできないクエストです。名声と悪名というのがあって、悪名が上がった人は賞金首になってしまうのですが、その特定の人物を倒すクエストがバウンティクエストです」
「へえ」
バウンティクエストを今まで見かけなかったので説明してなかった。見かけてもランクが低くてできなかったから。
元の部屋に戻ってくると、ちょうどバウンティクエストが出ていたので、壁に貼ってあるクエスト票を覗いてみた。
「あそこに、ああいった感じで……」
クエスト票を見て、俺は声を失う。
「なるほど。こんなふうにしてバウンティクエストって貼りだされるんだ」
へえ、とか、ふうん、と言いながら、青ちゃんはクエスト票を眺め、声に出して読む。
「古城の【魔術師】アンバー。悪名六〇、報奨金三千万…………三千万っ!? 高!?」
「まだ安いほうです。討ち取れない場合、どんどん上がりますから」
アンバー。
最後に確認されたレベルや特徴なども共有情報としてクエスト票に記載がある。
数日前から貼りだされているようだ。
俺たちが海で遊んだりしている間に、クエストが発生したらしい。
「……」
「湊くん、どうしたの? ぼんやりして」
【魔術師】アンバー。
俺が育てたキャラの一人だ。
※
今回で2章完結です。
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