第97話

 サラに引っ張られること数分。村の人に教えてもらった店へとたどり着いた。

 その店の扉をサラが押して開けると…


「…わぁ」


 思わずサラが感嘆の声を零す。中は決して広いとは言えなかったが、所狭しと色とりどりの衣服が並んでいた。そのどれもが丁寧に作られたと一目で分かるほどの代物だ。


「あら、いらっしゃい。お土産でも買うの?」

「まぁ、そんな感じですね」

「そう。ゆっくり見ていって。どれも自慢の品よ」


 店主の女性がそう言って奥の部屋へと消えていった。その後裁断する音が聞こえたので、おそらく服を作っているのだろう。


「じゃあ見ていこっか。…て言ってもクーの服だけなんだけどね」

「え…?」


 クーリアがぽかんと口を開ける。見るとは言っていたが、まさか自分の為だけだとは思わなかったのだ。


「日頃の感謝とかを含めて、プレゼントさせて?」

「わたしも!」

「……分かった」


 2人してそんなことを言われては、クーリアにとって断れるはずがなかった。


「こっちはどう?」

「こっちも似合いそうです」


 お互いが服を見せ合いながら意見を言い合う。それをクーリアは、ただ見ていることしか出来なかった…




「……なんというか、着させたら着させたで危ない気がするのは気のせいかしら?」

「……奇遇ですね。わたしも同じ気持ちです」

「……それどういう意味よ」


 あれこれと言い合い、結局着せてみることにした2人だったが、いざ着させてみると色々と危険だということが判明した。

 その危険という理由だが……


「あら。可愛い…というより、綺麗、かしら?」


 そう。店主の女性が言うように、可愛いというより綺麗という言葉が相応しい姿だったのだ。

 青みがかった銀髪と、もともと肌が白いこともあってか、白を基調として淡い青と深い青を組み合わせたワンピースがとてもよく似合い、左右の色の違う瞳と相まって、神秘的な雰囲気を纏っていたのだ。


(……これ、他の男に見せられないわね)


 サラが内心そう呟く。ただでさえ普段の服装で男共を悩殺しているというのに、この服装を見たら一体どうなるか。

 ……同性であるサラですらドキッとしてしまったのだ。本気で死人が出るかもしれない。


「……買う?これ」

「……辞めといたほうがいい気がします」


 リーフィアとしても、この服装のせいでクーリアが厄介事に巻き込まれるのは望まないのだ。


「え、変?」

「変じゃないけど…」

「寧ろ似合ってますけど…」

「似合いのよねぇ…」

「……それ、悪いの?」


 クーリアが小首を傾げる。確かに、悪いことではないのだ。…だが、論点はそこではなかった。


「……まぁ、クーなら何かあっても大丈夫だろうし、せっかくだから買っちゃおうか」

「……ですね」

「…その安心の仕方はどうかと思うんだけど?なに、わたし厄介事に巻き込まれる前提な訳?」

「「うん」」

「…………」


 2人から同時に肯定され、クーリアはどう反応すれば分からなかったのだった。



 





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