第92話※

 リーフィアが何故クーをあそこまで好きなのかがずっと疑問だったけれど……なるほど。簡単に言ったらクーに惚れたのね。

 ……まぁわたしもその1人ではあるのだけれど。


「じゃあわたしからも聞いていいですか?」

「いいわよ。なんでも聞いて」

「じゃあ……なんであの時、お姉ちゃんを馬車に残したんですか?」


 あの時…あぁ、魔獣に襲われた時ね。


「まぁまずは、1人でも馬車に残らないと危険だったからね」


 魔獣が追加で襲ってこないとは限らないからね。だからそれが、クーを残した理由のでもある。


「…まずってことは、まだ理由が?」


 …やっぱり気付いたか。


「えっとね……短弓だけじゃ危け」

「でもお姉ちゃんには防御魔法もありますし。危険はそうないのでは?」

「……そうよね。うん…はぁ」


 あまり話したくはないんだけど…主にクーがそう思ってるし。でもこれは聞くまで引かないだろうなぁ…


「…簡単に言ったらね。クーが出ちゃうと出番が無いのよ」

「出番…?」

「うん……」


 クーは魔獣をたまに狩っている。それは魔法の勉強などや食べる為だそう。

 ……で、そうなるとクーはかなり魔獣を狩るのに慣れているということになる。


「一瞬で終わっちゃうのよ…だからわたしたちの出番が無くなっちゃうのよねぇ…」

「そ、そうですか…」


 少しリーフィアの顔が引き攣った。まぁお姉ちゃんクーが意外とワイルドだと知ったからだろう。


「…あれ?じゃあわたしを助けた時は?あれを見る限りで短弓は十分届くみたいでしたし、それならお姉ちゃんは1人で倒していたのでは?」

「……わたしが、もし倒せても危険な時以外倒さないでと頼んでいたの」

「な、なるほど…」


 でもわたしでも、あの距離を撃ち抜くことが出来るなんて思ってもみなかった。一応短弓の射程外だったんだけどなぁ…


「…それ、もしかして」

「心当たり、あるの?」

「……推測ですが、お姉ちゃんは魔力を上乗せしたのでは?」

「魔力を?」


 武器に魔力を上乗せ…流すことで強度や威力を上げたりすることは出来る。けれど、それは近接武器だけ。だから矢に魔力を上乗せすることなんて出来ない。

 ……そもそもこの魔力を流す方法自体結構難しいんだけど、難易度はあの子には関係ないしね。それは問題外。


「わたしも近接武器だけだと聞いています。けれど、お姉ちゃんですから」

「……そうね。クーだものね」


 なんだかその言葉だけで、クーの予想外の行動全てを片付けられる気がするわね……。




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