第9話
「よし。今日はここまで。次は魔法実技だぞ」
座学を終え、ナイジェルがそう言う。
魔法実技はその名の通り座学で学んだ魔法を実践することだ。基本座学と実技はセットとなっている。しっかりとした知識がなくては魔法は使えないからだ。
「せんせー」
間の抜けた声で、クーリアがナイジェルを呼ぶ。
「どうした?」
「今日も図書館行っていいですか?」
「あぁ…そうだったな。いいぞ。ただし!絶対2時間で帰ってこいよ!」
ナイジェルが何故念を押してそう言うのかというと、クーリアには前科があったからである。
もともと本を読むとそれ以外気にしなくなるクーリアは、時間を忘れてしまうのだ。
そして、魔法実技なのに何故図書館へ行くのかというと、クーリアが使うのが無属性魔法だからである。
無属性魔法を扱える人は、生徒にも教師にも何人かいる。だが、教えられるほどの教師は、ほとんどが北棟にいる。故に、クーリアは学ぶことができないのだ。
……もっとも、学ぶ必要がないほどに研究しているのだが。
「クー、またいくの?貴方なら別に先生も要らないんじゃ…」
サラ達はクーリアがそれだけの人物であることをしっている。しかし、ほとんどの生徒や教師はクーリアの
「だってめんどうなんだもん」
しかしながら、クーリアにとって、そんなことはめんどうなことでしかない。
このいつもブレないクーリアの発言を聞いて、サラ達はまたしても諦め顔と深いため息をつくのだった……
学園の図書館にはかなりの数の本が納められている。だが、その数は北棟の方が桁違いに多い。クーリアはそちらにも行きたいのだが、そのためにクラスを上げる気にもなれず、仕方なく南棟の図書館へと向かった。
ガラガラと図書館の扉を開ける。すると独特な匂いがクーリアの鼻をついた。
だが、クーリアは迷いなく魔法書がある棚へと向かった。何度も来たことがあるため、匂いには慣れているし、迷うこともない。
しかしその途中で、ある先客に出会った。
「おや、君もサボりかい?」
そうクーリアに問いかけてきたのは、金髪赤眼のイケメンだ。クーリアは名前は知らないが、何度かあったことがある人物である。
「サボりというか、厄介者だからね」
「あぁ…そうか。君は白だったね」
クーリアはこの学園で唯一の白だ。そのため、かなり知られていたりする。
男の子はそう言うが、決してその声に軽蔑の感情は含まれていない。ただ純粋に納得したのだ。
「でも、ここに無属性の魔法書はないよ?」
「うん。でも、他の魔法書を見るのは楽しいから」
するともう話は終わったとでも言うように、クーリアは本を探し始めた。
それを見て、男の子も話しかけるのを止め、同じように探し始めた。
「うーん…大体読んだやつだなぁ…」
「え、読んだの?これを、全部?」
「うん。だって結構来てるもん」
クーリアはそう言うが、例え入学から毎日来たとしても、今日までで全てを読み切ることはまず不可能な量だ。
そのまま本棚を見つめていたクーリアは、隣の男の子の瞳が、まるで珍獣を見つけたとでもいうように輝いていたことに気づくことはなかった……
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