陰キャボッチ、反物質爆弾を作動する
「ま、まさかここまで簡単に百階層にまで来れるとは思っていなかったよ……」
「自分はちょっとスキルのおかげで現代兵器の数々が使えますからね。弾丸一発で倒せてしまうことが多いので護衛は得意なんですよ」
魔物やダンジョンで特殊な力をつけた者たちはその身に魔力を宿している。
魔力を持つものには魔力が通る者でなければ攻撃は通らないため、基本的に探索者は魔法などの魔力を使った攻撃または自分が触れ合っている間は物にも魔力が込められるという特性と合わせて剣などの武器を使って戦うのが一般的だ。
だが、魔力のこもった道具を作り出せる天津はその例外だった。
「凄いのね」
「当然、スキルだけではないですが、このスキルにはいつも助けられていますよ」
第九十八階層から第百階層に来るまでのおよそ一時間ほどの間にだいぶ打ち解けた天津と琴美は実に穏やかな雰囲気で会話しながら第百階層のボス部屋へと入る巨大な扉の前に立つ。
「さて、最後の戦いですが自分の持つ最高威力のものをぶっ放すので……ちょっと雨宮さんは自分の影に隠れていてください」
「わかったわ」
琴美が自分の言葉に頷いたのを確認した天津は自分の影を伸ばし、そのまま彼女を完全に覆い隠す。
「……少し、失礼しますね」
影によって外界から閉ざされた琴美のことを天津は優しく抱き上げ、扉を開けてボス部屋の中へと入る。
「いつまでも雨宮さんを閉じ込めているわけにもいきませんから。サクッと終わらせますね?」
天津は巨大な部屋のどこかにいるボスを探そうともせず自分の影から一つの巨大な物質を取り出す。
「よっと」
反物質。
それは陽性子・中性子・電子など通常の粒子とは全く逆の性質を持つ反陽子・反中性子・陽電子からなる物質であり、通常の物質と一度ぶつかれば対消滅を起こし、膨大なエネルギーを発生させる。
そのエネルギーは核分裂、核反応によって生み出されるエネルギーよりも遥かに多い。
「起動っと」
反物質爆弾。
つい最近日本が開発したばかりの反物質が起こす対消滅の際のエネルギーを利用した爆弾が起動され、灼熱が広がる。
たった一グラムであっても広島に投下された原子爆弾の同等のエネルギーを持つ反物質がなんと一キログラムもふんだんに使用された反物質爆弾は何もかもを無へと変える。
当然、そんなものを喰らえばどのような生命であってもひとたまりもない。
「おわーり」
実に広いボス部屋の中に残ったものはただ一つ。
一度は完全に消滅するも何事もなかったかのように再生した天津がボスも豪華な内装も消えたボス部屋で一人、満足げに頷いて自分の隣にある影から琴美を開放するのだった。
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