第45話 オレンジ
あの日、見るはずだった映画は確か恋愛ものだったけれど、その時間から見ることができたのはアクション映画だけだったから、それをふたりで観た。
観終わった後、ショッピングモールの近くの河川敷まで歩いた。
「あそこを怪我したら、あんな風には腕上がんないよな」
「それを言ったら、主人公がナイフで切り付けられた時、あの止血方法ではしっかり血は止まらないと思うんです」
「出血量もあれじゃ、輸血レベルだし、動けるわけがない」
「……ダメですね」
「うん。そういうとこばっか気になった。今度見る時は誰も怪我しないのにしよう」
そんな、たわいもない話をしていた時だった。
「未来にずっと隣にいて欲しいんだ。でも、きっと、多分一生、オレは志保理のことを忘れることはないと思う」
その言葉で、わたしは、眞白さんから少し歩くのが遅れてしまった。
「それがどんなに自分勝手だかわかってる。だから……」
追いかけて後ろから眞白さんを抱きしめた。
眞白さんは、わたしの手に自分の手を添えた。
「……これは告白ですか?」
「そう思っていいよ」
「わたしは、志保理さんを好きな眞白さんを好きになったんです。これからも、それは変わりません」
オレンジ色の夕日が川向こうのビルの間に沈んでいく。
でも、明日にはまた、まぶしいくらいに輝きながら、真上に向かっていく。
何度も。
必ず。
オレンジは特別な色。
「未来を大切にする」
そう言った眞白さんの顔は見えなかったけど、きっと、わたしの好きな笑顔のはず。
END
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