第55話 私との学校生活(回顧)
「あと……忘れられない思い出といえば、やっぱり文化祭だよね。合唱の時には無茶ぶりしてごめんね。でも、きっと何かきっかけがあれば森野さんはピアノを弾けるようになると思ってたから。だから、もしかしたら僕がきっかけになって、森野さんに恩返しできるんじゃないかって思ったんだ。でもただの思いつきでやっちゃったから、森野さんのことすっごい怒らせちゃったよね。しばらく睨みつけてきてたの気づいてたよ。こりゃやらかしちゃったかなって思ったけど、本番でも無事にピアノを弾けて、それだけじゃなくて、後々コンクールにも出るって言ってくれて……あの時は自分のことのように嬉しかったね。
楽しかったのは合唱の時だけじゃなくて、一緒に文化祭を回れたのもすっごい楽しかったなぁ。そうそう、森野さんのこと誘おうと思って決心を固めてたら、森野さんがいつの間にかさっさと帰ってるんだから、もうびっくりしたよ。こっちは無い勇気を振り絞ってたのにさ。ひどいよ。でも逆に周りに人がいないところで誘えたからラッキーだったけどね。
この文化祭が中学に入ってから初めてまともに参加できた行事だったし、森野さんに色々教えてもらえて、色んな経験ができたよ。まさかの最後に囲碁をすることになるとは思ってなかったけどね。けど、森野さんに褒めてもらえたから良しとするか。森野さんがコンクールに出るって言ったのもこの時だったね。あの時、森野さんは僕のことをキラキラしてるって言ってたけど、コンクールに出るって言った時の森野さんはきっと誰よりもキラキラしてたよ。今回はたまたま僕がきっかけみたいになったけど、きっとこの人は僕と出会わなくても何があってもピアノから離れられない、そんな人種の人なんだろうなって思ったね。
そういえば、囲碁の時に体育の五里先生もいたのは笑ったよ。意外に五里先生は僕たちのターニングポイントの時にいつもいるんだよね。授業は持ってもらってないのにね。病院にも来て打ってくれたし、結構優しい先生なんだよね。だからじゃないけど、僕は結構五里先生のこと好きなんだ。最初は怖かったけどね。まぁ、森野さんは、あの先生の名前なんて覚える意味ある?って言って全然好きそうじゃなかったけどね。ただ、口ではそう言っても、話したりしてる時は森野さんも実は結構楽しそうにしてたよ。
音楽室でも、教室でも、体育館でも、通学路でも……どこでも森野さんとの思い出がいっぱいで、思い出すだけでいつでも幸せな気持ちにさせてくれる……本当に夢みたいな日々だったよ……本当にありがとう。
何回ありがとうを言っても、何をやっても返しきれないくらい森野さんにはお世話になって、どうやって感謝を伝えればいいのか分からないくらい感謝でいっぱいです。
正直、高校デビューに失敗したのはヤケになってたのもあるんだ。中学まではずっと病気で学校に馴染めてなくて。高校でも馴染める気がしなくて投げやりな気持ちになってたから、ネットに書いてある通りの頭にして登校してたんだ。でも、森野さんに会って、お世話になって、楽しくなって、友達も増えて、どんどん学校に行くのが楽しみになって……ちゃんと生きよう、ちゃんと学校生活送ろうって思うようになって。高校生活なんて全然期待してなかったのに、こんなに充実させてもらって……僕に、僕の人生をもう一度プレゼントしてくれたのが森野さんだったんだ。」
私の方こそピアノ奏者としての人生を取り戻すきっかけになってくれて、そのお返しをしたいくらいなのに、山石君の方でもこんな風に思ってたなんて……私たちは互いのためを思いやって、互いに支え合える、そんな関係だったのかもしれないね。
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