第6話
「おい! 遅刻したの正直に謝ったら怒られたぞ!」
「わたしはそこまで怒られなかったよ」
1時限目が終わったあと、俺は廊下でめあと出会い、壁にもたれながらさっきの愚痴を垂れていた。
「クソ……こっちは学校通うために高い学費払ってんのに、学校に出勤することで金を稼げる立場の奴らに怒鳴られるとか……SMクラブなのかここは!?」
「まあまあ。けいちゃんさ、ちゃんと申し訳なさそうな顔した?」
「してないけど……」
「それがダメだったね。朝のけいちゃん風に言うなら、先生の『優越感ポイント』をいかに稼がせるかが叱られの極意なんだよ」
「ほう……?」
「いい? 教師が説教するのは、気持ちいいからなの」
「ふむ」
なんかどっかで聞いたことあるなそれ。説教しているとき脳内はドーパミンでドバドバだって話。
「だから、はじめから犯罪でも起こしたみたいな申し訳ない顔でこれでもかというほど謝り倒せば、お叱りフェーズに突入した時点で『優越感ポイント』はそこそこ貯まってるから、先生の激おこを防止できるってわけ」
めあは得意げにそう語る。
この口ぶりからして、実はこいつ、まあまあ怒られるようなことやってんのかもしれない。別のクラスだからあんま知らないけど。
「うーん、ちょっと参考になってしまった」
「でしょ」
これは学校生活のみならず、オカンによる説教にも応用できそうだ。親孝行ってワンチャン『優越感ポイント』を稼ぐために存在するのかもしれん。
「で、そんなことはどうでもよくてさ。さっきの話のつづき!」
☆☆☆
「——ええと、話をまとめると、遊具のトンネルの中で株式投資してたの? 金髪碧眼香川県民美少女が?」
「そのとおりだ」
と、めあはおもむろにスマホを取り出して何か操作する。
「どうかしたのか?」
「いや、スクールカウンセラーって予約なしでも行けるっけと思って」
「待て待て待て」
俺はめあのスマホを触る指を遮った。
「たしかに自分でも説明してて夢日記でも読み上げてんのかと思ったけど! これはマジなんだって!」
「けいちゃん……」
めあの哀れむような視線が痛い。
「これだけはほんとなんだよ! じゃあ放課後見に行ってみろよ!」
そう提案すると、めあは一瞬考え込むような仕草をする。そして若干のタメをもって返事をした。
「……わたしひとりで?」
「なんなら俺も着いてくよ。会いたいし」
「ええ……けいちゃんが空気と仲良くおしゃべりしてるとこを見せられるの? わたし」
「だから違くて!! ……で、行くのか!? 行かないのか!?」
「……いくけど」
「お、おう。そうか! じゃあ行くぞ!」
そんなわけで、今日の放課後はあの公園に寄り道していくことが決まった。
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