大人になったら幸せになれると思っていました。〜人生に最初からやり直すという選択肢をください〜
白水47
人生って何なのでしょうか。
何となく生きてきた。
一番最初の記憶は小学一年生。遠足の日に、小学六年生のお兄さんに手を握られながら歩いていた。妙に手汗が恥ずかしかったことを覚えている。
仲のいい友達はそこそこいて、中学生を何の
高校は普通の公立に入学した。
高校生として、普通に恋愛も経験した。
大学はいっておいた方がいいと周りに言われて、レベルが低くもない、高くもない大学に入学した。
中学、高校とやっていた
大学はやりたくもないテニスサークルに入った。何となくかっこいい先輩に誘われたからという理由で。
お酒の味を覚えて、自分があまりアルコールは得意でないことを知った。四年間、集中できない講義を聞いて、
右も左も分からない状態で就活をして、入学式以来にスーツを着て、いろいろな会社を訪れた。
「学生生活で力を入れたことは?」
言葉は企業によって違うが、様々な会社で聞かれたこの質問。毎回、
六社目くらいで
朝、何も考えずに起きて、会社に向かって、電車に乗る。お昼はお弁当、昨日の夕飯の残りものと冷凍食品。少しだけ残業をして、
土日は、
テレビの中にいる芸能人の自殺のニュース。あんなにキラキラした人たちも悩むことがあるんだなぁ、と他人事のように考える。
大人になったら、大きくなったら、何か素敵なことが起こると
足りなかったものは、何だろう。
それでも、世の中にはもっとひどい
満たされていないと感じるのはなぜだろう。
そんな時、結婚式の招待状が届いた。地元の、中学の友達からだ。
断る理由も特になくて、
結婚式の当日。ご祝儀は三万円、私の食費一ヶ月分を手渡して、席に座る。あの頃の友達と、世間話をする。
「久しぶり—! 今、何してるの?」
そんな問いに、
何故だろうか。
式の内容をほとんど思い出せないのは。
「来てくれてありがとう。すごく嬉しい」
そう言った花嫁の目は笑っているように見えた。
とても幸せそうだった。
結婚式の帰り、
家までの帰り道で、考えていた。
今日はどんな気分でいれば良かったのだろうか。うまく笑顔を作れていたのだろうか。そんなことを考えて、素直に
ピコン。
携帯から着信音が鳴る。画面を見ると、母親からのメッセージだ。
『○○ちゃんの結婚式どうだった? 後で写真送ってね。あんたも明日で30なんだから、早く良い人見つけなさいよ』
そうだ。
今日は、私が20代でいられる最後の日だったのだ。
——虚しい。
そう思った、そう思ってしまった瞬間、目から大粒の涙が
「あれ、何で」
何の為に生きてきたんだろう。
分からない。
人生って何なんだろう。
知らない。
この先もずっとこういうことの繰り返しなのだろうか。
しんどい。
「……っ」
声にならない声を口から吐いて、メイクもぐちゃぐちゃになっているのが分かる。側から見れば、私は汚いおばさんなんだろう。
辛い。悲しい。生きづらい。ネガティブな言葉が頭の中でぐるぐると回っている。
それでも世界は終わってくれないし、幸せにしてくれるヒーローも現れてはくれない。うずくまって泣いていても何も解決しない、誰も助けてくれない。
「にゃあ」
私に声をかけてくれたのは、お腹の大きな黒猫だけだった。
大人になったら幸せになれると思っていました。〜人生に最初からやり直すという選択肢をください〜 白水47 @sirouzu_s
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