嫁を寝取られてしまった。娘に。俺はいったい、どうすればいい?

相対音感

第1話 帰宅

「よし、今日は案外早く帰れたぞ。ここ2週間ぐらいあの(ピ—)で(ピ—)な上司のせいで帰るの遅かったからな。」


 俺、東山幹隆ひがしやま みきたかは帰宅がいつもより早くなり、少しだけ気分がよかった。


 気分がイイと、ただのマンションだとか、光で満ち満ちている街並みなんかでも、普段よりも鮮やかで美しいものに見えてくる。


 自分たちの家のドアノブなんかはもう黄金かってくらいには光り輝いて見える気がする()


 その黄金のドアノブを掴み、ドアを開けたら大声で……ではなく普通に小声で「ただいま」とぼそりと言う。


 だって早く帰れたっていっても全然夜だからね。大声で言ったりしたらご近所迷惑だし家族に怒られる。


 家に入ると、玄関まで届くぐらいの叫び声?的なのが聞こえてきた。


 まぁ、よく聞かなくても分かるのだがこれは、東山玲羅ひがしやま れいら(俺の嫁)の喘ぎ声だ。


 浮気されるのも仕方がない。結婚したのも親の都合だし、当然俺らの間に恋愛感情なるものは欠片も無かった。しかも、結婚してからも何かシようという気にもなれず、結局養子を引き取ることに。


……というか、美空みく(俺らの養子)はどうした?


 玲羅が家の中で声が駄々洩れで浮気をしている、ということはあいつは今家にいないのか? どこをほっつき歩いてる?


 もう面倒だし、そんなショックを受けたわけでもないから、玲羅とその浮気相手を訴えるのは無しにして、


 お節介かもしれないが、心配なので美空は問いただそうと考えた。


 取り敢えず、今することは玲羅の浮気相手の顔を拝むところから。


 玲羅の部屋の前まで行くと喘ぎ声がほぼクリアに聞こえてくる。


 何に悩むのか分からないが、少しだけ深呼吸をしてノックはせずにドアを開ける。


 ベッドの上には予想通り、位置関係的には下の方に玲羅がいて、浮気相手は…美空だった。


 ——————はぁ?


 二人ともこちらに気づき、時間が停止する。


「ああ~ その~ なんだ。おやすみ。」


 そう言って俺は自室に逃げ込んだ。


 喘ぎ声はもちろん止まったし、俺の脳みそはほぼパンクしている。


 ……寝よう。こういうときはこれが一番。

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