絶対秘密主義の黒ずきんちゃんと愉快な仲間たち

かぐろば衽

黒ずきんちゃんと白ずきんちゃんの巻

 私、黒ずきん。黒い頭巾をかぶってるからそう呼ばれてる。


 本当の名前は秘密。だってプライバシーは大切にしたいもの。

 自分のことはぜんぶ秘密。だって教えたくないもの。

 現時点であなたに教えてあげられるのは、そこそこ可愛い女の子ってぐらいかな。


 物事ってほどほどに隠れていたほうがいいと思うの。

 私がこうなったのにはワケがあるのよ。


 だってママったら、お家の中で起きたことなんでも喋っちゃうんだもん。

 だからやめてって意思表示でこの黒い頭巾をかぶることにしたの。


 開けっ広げの人は嫌いよ。

 あ、そんなことを言ってたらアイツが来たみたい……。



「あら、黒ずきんちゃん。こんにちは」


「……こんにちは、白ずきんちゃん」


 嫌いだけど、いちおう挨拶はするわ。

 だって悪い子だって思われたら、スポットライトで照らされてしまうから。

 だからほどほどに明るく振舞うのは、私のポリシーに反さない。


「ねえねえ、聞いた聞いた?」


「なあに」


「昨夜の夜、防災ずきんちゃんのお家が火事にあったのよ」


「えっ、大ごとじゃない! どうして教えてくれなかったの。あの子は大丈夫?」


「ええ無事よ。あなたがアドレス教えてくれないから連絡できなかったのよ」


「……そうだった。あなたに教えると、全員にバラされちゃうもの」


「さすがのわたしでも、そんなことはしないわよ」


「ほんと? じゃあ教えようかな。そういう大事な連絡は教えてほしいから」


「うんうん」



 ウソだった。


 朝起きたら、クラス中の子が私のアドレスを知っていて、挨拶のメールがいっぱい来てた。マジ最悪。


「ふざけるなバカ。完全にプラシバシー侵害じゃない」


「そう言わないの。ちゃんとあなたの知っている子だけにしておいたでしょ」


「教えるか教えないかは私の権限なの。本当にああいうのやめてちょうだい」


「でもあの子たち、前々からあなたと友達になりたがってたのよ」


「えっ、ほんと?」


「ええ、そうよ。いつもあなたが隠れちゃってお話する機会がないから、みんな残念だって思ってたの」


「そうだったんだ。えへへ、ちょっと嬉しいかも……」



 バラされた。


 朝起きたら、ほんのり頬が赤くなって照れてる写真がクラスの子に拡散されてた。

 お喋りおばさんから教えてもらったから、町中の人に見られたみたい。マジ最悪。


「ふざけるなバカ。ほんとやめてよね、ああいうの。肖像権侵害じゃない」


「そう言わないの。なかなかに評判よかったわよ」


「私は誰かに噂されるのがイヤなの」


「みんな可愛い可愛いって言ってたわよ」


「えっ、ほんと?」


「ええ、そうよ。この街一番のアイドルだって盛り上がってたわ」


「そうなんだ。えへへ、なんだか恥ずかしいかも……」



 やっぱりバラされた。

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