第18話 優しい嘘 3

 クラスメイトであり、自分の席の一つ前に座る沙條青菜は推理小説や推理ドラマにアニメが好きな所謂推理オタクだ。

 席の前にいるため、空き時間や休み時間によく推理小説を読んでいるのを目にしていたことを取っ掛かりに仲良くなったクラスメイト。


 「なに読んでるんだ、沙條」


 こんな典型的でぎこちない声掛けから始まったものの、思いのほか会話は弾んでいた。沙條は話すのが上手い、というか引き付けられる話し方をするため、長い話でも聞いていて苦にならないどころか興味をそそられる。


 先週話し始めたころは、好きな小説、ドラマ、アニメなんかから始まったが、今日は仲良く喋るようになってから初めて土日を経由した月曜日だったため、休み明けの常套句とも呼べるであろう「土日、なにしたの」なんて会話から今に至る。


 「そういうことって。なんだ―――美桜さんがなんで買い物をしなかったのかが分かった。ってことか?」


 「たぶんね。—―でもあれだよね。愁也くんは私の話し方が上手いって言ってくれたけど。愁也くんもすごい上手だったよ?小説の語り部みたいだった」


 「なんだよそれ、褒めたって何にもでないぞ」


 社交辞令のような褒め合いはさておいて、実体験をしたわけでなく、ただ一当事者、さらに言えば参考人でしかない自分の言い分を聞いただけで分かってしまうとは

推理物をよく見ているだけのことはあるな、と感心した。


 「で、理由は何なんだ?」


 さっそく、答えを求めるが、青菜はいやいや、と首を横に振った。

 

 「そんなの面白くないでしょ?推理しないと、大丈夫少しづつヒントを出すから」


と、何やら楽し気に青菜は言って、じゃあ、と切り出した。


 「やっぱり誰に得があるのかを考える必要はあるよね」


 一つ目のヒントが提示された。

 そう、得。言い換えればメリット―――たしかそれは彼女、如月美桜の口からも出たものだった。

 誰かに得が無ければ嘘をつく必要なんてないのだから。


 「いや、それは美桜さんだけだろう。登場人物は彼女しかいない」


 「ええ、そんなことはないよ?」


 「ああ、団子屋の老店主か。確かに団子3本分は儲かっている、か」


 「そんなわけないでしょ。愁也くんと愁也くんのお母さんね。じゃあ次のヒント。街に言って何をしたかをもう一度整理してみて」


 商店街へ行き、街をゆっくりと練り歩いて、途中団子を食べて、その後、夕方5時になるまで、商店街から一本奥に入った場所にある市立図書館に行って…。


 「時間を潰そう――そうだ、そう言われて図書館に。時間を潰したことも解明の糸口になるのか」


 「うんうん、いいねいいね、あと少し。ここで大ヒントと行こう。得っていうのは自分のためだけじゃないよね。家に帰ったところで普段より元気なお母さんを見たと、年中愁也くんのために奔走するお母さんの元気な姿を」


 「ああ―――――そういうことか…」


 日常の謎は余りに簡単にほどけていった。

 そうか、如月美桜が付いた嘘は、自分のための得ではなく、自分ではない誰かの得のためについた嘘だったのか。

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