美少女に転生したけど納得いかないので男に戻りたい

かずあきら

プロローグ

予想だにしない結末なんてそうそうあるものじゃない。


というより、そんな結末にならないために青春を犠牲にして頑張ってたわけで。


いくら一流大学といえどもあの成績で、あれだけ努力すれば受かるだろ。


なんて、まわりで泣いてる奴らが聞いたら呪われそうだが。


安堵のため息を吐きながら親に連絡入れて、都心に来るからついでと思って予約していた美容院までの経路を確認。


胸のあたりがソワソワして落ち着かないから、少し早いが寄り道でもしながら行こう。


書類一式は郵送されるらしいし。


平静を装おうとしても勝手に口角が上がる。


そんなに心配はしていなかったんだが。


まあ、それも仕方ないか。


華の高校生活を棒に振り、男子ばっかのムサ苦しい環境で部活もゲームも女子も知らず勉強、勉強、勉強の日々。


そんなクソみたいな生活が!やっと終わったんだ!


これでもう就職安泰!将来安泰!


高校の分まで四年間遊び暮らしてやる!



そんな脳内の叫びをかき消すようなクラクションの音。



あ、こういう時って本当にスローモーションに見えるもんなんだな。


浮かれすぎて信号が見えていなかったらしい。


思考は働くんだが足に向けた「逃げろ」という信号は間に合わない。


そうして目の前が真っ白になって…




視界が戻って来た時には、アスファルトの黒の上に生ぬるい赤。


これは僕の血か。


周りに人が駆け寄って来る気配を感じる。


どこか遠くで呼ぶ声が聞こえる気がする。


だけど声の出し方も体の動かし方も忘れてしまったみたいだ。


度を越した大怪我って逆に痛くないんだな。


徹夜した翌日にベッドに倒れ込んだ時みたいに、微睡に飲み込まれていく。



そうして僕はもう一度目を閉じた。

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