たまたま憑依しちゃった女の子が好きな人は私の好きな人だったお話。
ここあ とおん
第1話 幽霊誕生!
2023年3月22日。
私
は
病
気
で
死
ん
だ
゜
好きだった幼馴染みに見守られながらゆっくりと。人は死んでも耳は聴こえる。まさにその通りだったかもしれない。彼の泣いている声がずっと聴こえたような気がした。
そして3日後くらいかな。私は幽霊になってた。身体は半透明になってるし、足は完全に透けちゃったし、なんかフワフワするし。
気付いたら私は知らない場所で幽霊になっていた。彼とはもう一度会いたかったけどここがどこかも分かんないのでとりあえず周りをブラブラするだけだった。そして歩いてる途中、誰かの泣き声が聞こえてきた。
私はその泣き声が気になって探してみた。すると1人の女の子がブランコに座って泣いていた。
「どうしたの?大丈夫?」
私はその子をなんだか放おって置けなくて話しかけてみる。しかし聞こえていないのかその子は全く返事をしなかった。
「幽霊の声は人には聞こえていない」
「えっ?」
振り返るとそこには半透明で足がない人がいた。
「わあああ!!ゆ、幽霊!!!」
「お、おい落ち着け!てかお前も幽霊だろ!」
あ、そっか。と私は顔を赤くする。よく見るとその人は中年の男性だった。
「これは俺の娘だ」
中年さんは目を泣いてた子に向ける。そうなんだ。
「俺は1ヶ月くらい前、事故で死んだ。多分そいつも俺のことで悲しんでるんだろう」
そうか、この子は1ヶ月もお父さんを……。
「お母さん……」
体育座りして泣いている女の子は唐突にお母さんと囁く。あれ?
「「え?」」
この子、お父さんのことで泣いてるんじゃないの?
「お母さん……ごめんなさい……」
ごめんなさい?私はその子の言葉の意味を考えながら固まってる中年さんを見る。
「なんだよ俺のことで泣いてるんじゃないのかよ〜!」
私は横目で泣き喚く中年さんを見てアハハ……と苦笑いする。
「あ、中年さん。この子の名前なんていうの?」
中年さんは泣きながら「佐々木……衣舞《いま》」と言う。
へえ~いまちゃん……か。私よりも歳下に見えるけど学校の制服着てる?
「中年さん。この子と話すにはどうしたらいいの?」
中年さんは態勢を元に戻す。
「それは俺が訊きたいけどよ。ヒョウイって言うの?衣舞と合体?みたいなのすれば話せるって聞いたことあるぜ」
ヒョウイ?衣舞ちゃんと合体?ちょ何いってんのコイツ。
「ま、あくまで幽霊間の噂話だけどな」
そうか憑依ね。なるほど。でも憑依ってどうやれば……。
「考えるだけ無駄だよ。そう簡単なものじゃないらしいし」
「あ、できたかも」
「はあああ!?」
「……ん。うう?」
私は目をゆっくりと開ける。あれ?身体が半透明じゃない。さらに私は周りを見てみる。すると驚いたような顔をしている中年さんがいた。
そしてその右には半透明な私がフワフワと浮いていた。
「ええええ!?私と衣舞ちゃん、入れ替わったってこと!?」
衣舞ちゃんには私の姿、そして声を感知出来るらしい。中年さんは見えてないっぽい。
あれでも、今私は衣舞ちゃんの身体の中に入ってるの?ちょっと待って頭が混乱してきた。
「おい、少女。どうやって憑依したんだ?」
「どうやってって……えーっとヒョイっと入ったら」
「ダジャレ言ってる場合か!」
衣舞ちゃんには中年さんが見えないから私の謎の独り言に首をかしげていた。
「あー、えーっとあなた佐々木衣舞ちゃん?」
衣舞ちゃんはこくん……と頷く。
「えーっと何から言えばいいのかな……?あ、私は
ああ、駄目だ……。私も中年さんも衣舞ちゃんも頭の上にハテナマークがいっぱい浮かんでる。
「どうすんだよ少女」
中年さんが暗い声で私に話しかける。
「一度人間に憑依したら1ヶ月はその関係が続くと言われてるんだ」
「は!?ナニソレ!?」
1ヶ月って結構な期間だけど!
「じゃ、私1ヶ月間ずっとこのままなの!?」
「いやお前と衣舞は入れ替えてもいいんだ。でも他の奴とは入れ替えられないし衣舞から離れてもいけない。つまりお前は今日から衣舞の背後霊だな」
「はあ!?」
まあ、急な展開だけど。こうして私と衣舞ちゃん1ヶ月間一緒に過ごすことになってしまったのだ。
「じゃ、席替えしまーす!」
帰りのホームルームで担任が明るく言う。それに先導されるようにクラスメイト沸き立つ。席替えのくじは昨日引いた。そして今日は番号は発表され、どこの席か誰の隣かが明らかになる。
そう、席替えとはもはや学校行事の1つ。一学期からずっと男子の隣だった俺はそろそろ女子の隣がいいと思っていた頃だ。俺は今日、これに運命をかける!
「じゃあ黒板に名簿貼るんで各々見てね」
机に座っていた生徒達が一斉に立ち上がる。まるで合格発表の張り紙を見るような真剣な眼差しで黒板に貼られた紙を見た。
古賀翼。古賀翼。古賀翼。どこだ?
!
発見。後ろから二番目。これは授業中寝やすい位置!そして真ん中の列だからクーラーも直で当たる!
そして隣は……。
「佐々木……衣舞」
そんなやつ……いたっけ?
キーンコーンカーンコーンと放課後を知らせるチャイムが鳴る。
「翼、お前席替えどうだった?」
「おう、最高だわ。後ろの方だしクーラーは直で当たるし」
「まじかよ。ラッキーだな」
俺達は雑談しながら駐車場に向かってた。
「で?隣は誰?」
「え?ああ、佐々木衣舞って奴」
「ああ、佐々木ね。なんか不思議な奴だよな」
不思議な奴。そう言われて俺は思い出した。
席替えした後、俺は佐々木に声をかけてみた。
「あの……よろしく」
佐々木はメガネをかけてめっちゃ大人しい奴だった。
「あの……佐々木?」
佐々木はいくら呼びかけても返事がない。何もう嫌われてんの俺?そう思いながら佐々木の肩をポンと叩く。
するとくすぐったかったのか知らないけどビクッとして俺の方をやっと見た。
「あ……よろしくこれから」
佐々木は下を向いてペコっと頭を下げて元に戻った。
「まあ、確かに不思議な奴だな」
俺たちは立体駐輪場の階段を上る。鉄の階段は一歩ずつ上るたびにコーンコーンという音を響かせる。
階段を上り切った後、コンコンコン階段を駆ける音が徐々に大きくなっていった。誰だ?と振り向くとそこには息切れした佐々木がいた。
「ん?佐々木?どうしたの?」
佐々木は何か恥ずかしそうにずっと下を向いていた。
「顔赤いけど大丈夫?」
佐々木の体は一瞬ビクッと跳ねたが一向に口は開かない。
「佐々木?」
俺は佐々木の顔を覗くように下を見ると小さな声で「ひゃっ……」と呟く。
「佐々木が喋った……」
俺の隣にいた友達が思わず声を出す。
「普段喋らないのか?」
「ああ、喋ったところ1回も見たことない」
「そうなん――ってうわ!」
佐々木は俺の手を握って急に引っ張り出す。そしてさっき上った階段を走ってくだる。
「お、おい佐々木⁉」
おいおい、本当に不思議なやつだな。佐々木は俺の手をぐいぐい引っ張って再び校舎に入る。
「おい佐々木!どこ行くんだよ!」
佐々木は俺の言うことを無視してそのまま階段を駆け上がる。そうしてたどり着いたのは誰も居ない屋上だった。
佐々木は1人でなんかごちゃごちゃやっている。まるで見えない誰かと会話しているような。
……ん?佐々木の隣に誰かいる?うっすらだけど何かは見える。なんだ?誰だ?
「うわっ!」
うっすら見えた何かが佐々木の中に入っていった。え?なに?佐々木はその場に倒れる。
「おい、佐々木?大丈夫か?」
佐々木は「うう……」と言いながらゆっくり体を起こす。
「佐々木?」
「……あ?」
え?佐々木は急に怖い声を出す。
「はは、久しぶり翼」
外見は佐々木だけどまるで中身だけが入れ替わったみたいな感じになっていた。
「久しぶり……?」
「は?覚えてないの私のこと。マジ最低」
待てよ。この喋り方、この雰囲気。……まさか!
「千葉⁉」
「うん!」
千葉……。千葉永音。半年くらい前に病気で他界してしまった俺の幼馴染み。でも、なんでこうなってるんだ?
昨日の夜に話は戻って、私と衣舞ちゃんはしょうがないから一緒に家に帰った。
「ええと、という訳だからさ。1ヶ月間こういう関係になっちゃうんだけどよろしくね」
衣舞ちゃんはまだ怖がってこくんと頷くだけだった。
「えーっと中学生?」
衣舞ちゃんは首をブンブンと横に振る。
「え?じゃあ小学生」
もっと首をブンブンと振る。
「高校生⁉」
こくん。
「一年生?」
こくん。
「へー、なんだ私と一緒じゃん!」
え?と言うような顔で私を見る。
「じゃあさ私達、友達になろうよ」
衣舞ちゃんは少し目を輝かせる。
「……友達?」
あ!やっと喋ってくれた!
「うん!まあ私幽霊だけど……。あなたに悪いことはしないからさ」
そう言った後に私は握手するつもりで衣舞ちゃんに手を差し伸べる。
「……うん」
衣舞ちゃんは私の手を握ろうとする。
「うわっ!」
私の手が透けて私達は握手出来なかった。
「あはは、やっぱ握手できないね」
衣舞ちゃんも少し口角が上がる。
「あ、そうだ。友達なったからさ訊かせてよ」
ん?と衣舞ちゃんは首をかしげる。
「衣舞ちゃんって好きな人とかいる?」
衣舞ちゃんの顔が沸騰したみたいに赤くなった。
「……と、言う訳!」
私は胸の前でポンと手を叩く。
「いやどういうことだよ。んだよたまたま憑依したって」
「しょうがないでしょこれが事実なの!」
私は屋上で衣舞ちゃんに憑依して昔好きだった古賀翼って人と話してる。まさか古賀が衣舞ちゃんと同じクラスで好きな人だなんて思いもしなかったけど。
「で?俺を呼んだのはそのため?俺放課後用事あるんだけど」
「いや、まだ話したいことはある!」
古賀はまだあんのかよと面倒くさそうな顔をする。一度死んだ奴に会えて嬉しくないのかよコイツ。「衣舞ちゃんがね、あんたのこと好きって言ってたの!」
「は!?」
「え!?」
古賀と衣舞ちゃんの声が同時に聞こえた。私は衣舞ちゃんを気に入ったから古賀との恋を果たしてやるよ。
「だからね、衣舞ちゃんと付き合え!古賀!」
「ヤダ」
「早いわ!!」
くそ……こいつ。
「じゃもう俺帰るわ」
「は!?ちょ待て!」
まるで逃げるように古賀は行ってしまった。私は半透明の衣舞ちゃんを見る。衣舞ちゃんは少し寂しそうだった。
よし、決めた。
残りの1ヶ月間、
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