第15話 皆の反応

「おはようございます、桜庭さん!」


 綺麗で可愛い笑顔を浮かべた宮橋さんがそう挨拶してきた。


「お、おはよう、宮橋さん。朝からどうしたの?」


 普通にびっくりした。朝から会えるとは思ってなかったからだ。


「実は、桜庭さんと一緒に学校に行けないかな、と思って。ちょっと待ってたんです」


 衝撃だった。まさか朝から宮橋さんと一緒に登校できるなんて思ってもみなかった。しかし、疑問もある。昨日の夜にチャットで話していたが一緒に登校するか、何時頃に家を出て登校しているか、などは全く話していなかった。なので彼女はずっと外で待っていた可能性もある。


「桜庭さん、どうしました?」

「い、いえ、なんでも無いです。ただ、なんで居るんだろう、と思って」

「ちょっとしたサプライズです♪」


 とても可愛い理由だった。なんでも昨日色々話している間に思いついたらしく、最寄駅も一緒だから、と説明してくれた。


「でも、もし俺がもっと早くに出て電車に乗っていたらどうするつもりだったんですか?」

「流石に遅刻はまずいので時間がきたらその時は諦めて学校に向かってまた違う日にトライするつもりでした」

「ということは長い時間外で待っていたんですよね?寒くありませんか?」

「少し寒かったですけど大丈夫です。朝から桜庭さんと会えたので待った甲斐がありました」

 

 確かに朝から会えるのは嬉しいが同時に言ってくれたら良かったのにと思った。この寒い中外でずっと待つというのは簡単ではないし辛かったはずだ。


「今後、お願いしますからこんな事しないでください。風邪を引いたらどうするんですか?」

「た、確かに... そこまで考えて無かったです...」


 少しポンコツなのだろうか、と蓮は思った。いくら会いたい相手がいると言えどこの寒さの中で待つことに少し危機感を覚えた方がいいのでは、と。


「で、どうでしょう?一緒に登校しませんか?」

「もちろんです!」


 時間はまだ少し余裕があるがあまり長話をしてしまうと遅刻してしまう。なのでお互い改札を通り、そのままホームまで並んで歩いていく。


「ちゃんと起きれたみたいで良かったです。昨日は長々と会話を長美化してしまって申し訳ありません」

「いえいえ、楽しかったので大丈夫です。いつでも連絡してください」


 そう言っていると電車が来た。数人が降りて行ったがそれでも朝の時間なのでたくさんの人が乗っていた。


「人が多いですね〜。日本、って感じがします」

「海外だと違うんですか?」

「俺がいた所は電車は無かったんですよ。なので移動は基本的には車でした」

「あ、そうなんですか?ではどうやって通学していたんですか?」

「家と学校が近かったので歩いて行っていました。歩いて5分くらいの距離だったので」

「5、5分ですか?!すごく近いんですね」


 蓮がいた所では電車はあったのだが日本ほど日常的に使うものではなく、距離がある都市間で使われるのが一般だった。簡単なイメージだと新幹線のようなものだ。と言っても新幹線ほど速くも無ければ便利でも無いが。


 他にも色々な話をした後、学園の最寄駅である木乃宮きのみや駅に着いたのでおり、学園へと向かう。


 その間にも色々と会話に花が咲いたがその道中でなぜか色々な人から見られている感じがしてならない。


「...ねぇ、あの人って...」

「...馴れ馴れしく宮橋さんと歩きやがって...」

「...あの人、見たことないよ?...」

「...もしかして噂の転入生ってあの人?!...」


 あまりよく思われてないのだろう。特に男子からは。その理由はなんとなく察しがつく。宮橋さんと歩いているからだろう。そんな人が、それもあまりパッとしない転入生と一緒だったらそういった反応になるだろう。


 そしてタチが悪いことに面と向かって言ってこない。なのでこちらとしても注意しづらい。


「桜庭さん、どうしたんですか?」


 少し周りを見渡していたら隣に居る彼女からどうしたのか聞かれた。


「いえ、なんでもないですよ」

「そうですか?なら良いんですが。何かあったら言ってくださいね?」

「はい、頼らせてもらいますね」


 そうして学園につき、上履きに履き替える。クラスが違う宮橋さんとはここで別れて教室に向かった。そして教室に入ると皆の目が一斉に蓮の方に向いた。


「お、おはよう...」


 そう挨拶したが誰からも挨拶が返ってこない。女子は蓮を見てヒソヒソと話しているが男子に関しては睨んできている。睨まれるような事をしただろうかと不思議に思っていると敬斗が遅れて教室に入ってきた。


「おはよ、蓮。どうした?」

「あぁ、敬斗。おはよう。いや、なんかクラスの皆がね...」


 事情を説明し終わる前に敬斗が教室の中に入った。そして急に声を上げた。


「おい、急になんだよ。昨日はあんなに質問攻めにしておいて今日になったら除け者扱いか?」


 敬斗がそう言っても誰も何も言わずに目を逸らすだけだった。


「なぁ、良い加減にしろよ。昨日来たばかりのコイツに何を求めてるんだよ?」

「ねぇ、どうなってるの?俺、何かまずい事した?」

「お前が悪いとは思わないんだけどな〜」


 何をしてしまったのかを考えていると


「お前、今朝は宮橋純恋と一緒に登校してきたろ?それだよ」

「え?」


 耳を疑った。宮橋さんと一緒に登校しただけでこんな扱いを受けるのか、と。


「宮橋って結構顔が整ってて性格も良いだろ?それに頭も良いから男子女子両方からすごい人気なんだよ、良い意味でも悪い意味でも。でも暗黙の了解みたいなもので宮橋と一緒のクラス以外のやつはあんまり関わっちゃいけないな風潮があるんだよ。」

「それを俺が破っちゃった、と...」

「事実だけ言えばそうなる。だけど昨日来たばかりのお前にアイツらは何を求めてるんだか...」


 事情は分かったがまさか宮橋さんと一緒に登校しただけでこんな状態になるとは思わなかった。敬斗の助言でとりあえず席につき、ホームルームまで待つ。敬斗がなんとかしてくれると言ってくれたが彼に任せっきりなのも良くないのだが何をしたら良いかが分からない。どうしようかと悩んでいるとホームルームが始まった。


「皆、おはようございます。あれ、どうしたんだい?皆の顔が険しいけど?昨日は宿題出してなかったはずなんだけど...」


 やはり久保先生から見ても少しおかしいらしい。


「何があったのか分からないからあまり言わないけど気持ちの切り替えは必要だよ?よし、じゃ日直さん、号令お願いします」


 そう言って高校2日目が始まった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 こんにちは、Ariesです。


 実際の学校のクラスだとこんな反応はされないんでしょうがちょっと書いてみたくて書いてみました。皆さんはこんな経験ありますか?


 次のエピソードも楽しみにしてくださると嬉しいです。

 

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