This is My Life 〜 帰国子女が送る憧れの高校生活

Aries

邂逅編

第1話 帰ってきた場所

「ここからまた長い移動か〜...」


 ただでさえ14時間という長いフライトの後なのに、これからの移動やする事を考えると頭が痛くなる。飛行機から降り、スーツケースなど受け取った後、関税を抜ける、などとやる事が色々ある。もはや考えたくもない。しかし、そうもいかない。これは自分、桜庭さくらばれんが望んだ事なのだから。


「とりあえず降りよう」


 頭上の荷物置き場からリュックとキャリーケースを取り出し、客室乗務員さんたちにお礼を言って飛行機から降り、タラップを通じてターミナルに移動する間、12月特有の肌に刺さるような寒さに襲われた。


「たしか...」


 ここから楽なはずだ。というのも以前帰ってきた時は世界的にウイルスが流行していた時だったので空港での手続きなどが長く、延々と歩かされた記憶がある。空港で検査もし、時期によってはホテルに連れて行かれ、隔離までしなければいけなかった経験もある。しかし、今回は違っていた。手続き自体はあったものの全てオンラインで完結できたので前ほどの煩わしさは無かった。なので少し迷いながらも周りに着いていきながら荷物受け取り場まで来た。


「まだ荷物は出てきてないな〜」


 少し荷物が出てくるまで時間があるのでその間にバスの時間を調べる。というのもこれからいく先は遠くなるのだ。


「タクシー使いたいけど捕まるかな〜」


 ただでさえスーツケース2個にキャリーケース、リュックと荷物が多い。そして、長時間のフライト後なので出来るだけ楽はしたい。そういうのもあって元々タクシーを使って移動する気ではいたが。


「こんなに人が多いと厳しいか...?」


 この空港でこの混み具合。これからいく先などはもっと人がいて混み合っていると考えて良いだろう。


 しかし、考えても何も変わらない。そんなことを考えているとちょうどスーツケースが現れた。母が見つけやすいようにとスーツケースの取手に布をつけてくれたのが功を制したようだ。とてもありがたい。


「さて、ここから...」


 バス移動になるため、バス停に行かなきゃいけないのだがそのバス停が分からない。というのも今までは祖母の家にお世話になっていたが祖母の家に行く為には国内線に乗り換えなきゃいけない。その時も大変だったな〜と思いながら周りを見渡す。


 今まであまり降り立った事がない空港のため、使用が全く分からなかった。


 電車と似たような使い方だろうと思い、スケジュールが書かれている券売機に向かうと自分が持っているICカードも使えるとの事で早速ICカードに入金しておいた。


「え〜と...」


 自分が乗るバスとバス停の番号を確認した後、ちゃんと荷物がある事を確認してからバス停に向かう。人が多いのと荷物が多いのであまりスムーズに向かうことは出来なかったが時間に余裕があったのであまり焦りはしなかった。


 バス停についた後はバスを待つだけ。音楽を聴きながら待っているとふと思い出した事があった。


「そうだ、星花せいか学園高校のことを調べておかないと」


 というのも、こんな時期に転入するのだ。事前に色々と調べておかないと大変な思いをするだろう。しかし、なぜこんな時期に日本の高校に編入したのか。これにはちゃんとした理由がある。


 蓮は物心がついた頃からずっと海外で過ごし、育ってきたのだ。ずっと英語を使う環境の中で日本語を使う時は家族だけであり、日本の教育カリキュラムにはあまり触れたことがなく、日本での生活にずっと憧れを持っていたのだ。記憶が正しければ日本の小学校には行っていたが一学期が終わるのを待たずにして海外に行ってしまった。


 そこからは大変だった。慣れない地、慣れない言語、慣れない人々。すべてが違い、日本に帰りたいと泣き喚いていた。


 他人から思えば幼稚な行為だが当人のその時の状況を考えると至極真っ当なものだろう。今まで過ごしてきた土地を離れ、友人と離れ、色々なものを置いてこないといけなかったのだから。それを泣かずに我慢しろというのを7歳の子供に求めるのは間違いだろう。


 そんな幼少期を過ごしたが蓮の日本愛はずっと変わらず、年に一回帰国した時は自分から小学校に通いたいと言ったほどだ(結局は無理だったが)。しかし、日本での暮らしや生活を夢見ていた蓮は次第に日本の学園をベースにした作品にハマっていった。それが良い影響だったのか蓮は英語がベースの生活にも関わらず日本語も堪能だったのだ。そして学校での成績も決して悪くはなく、いつでも平均以上は取っていた。


 さて、ではなぜ12月に日本へ帰国し、高校へ編入したのか。一番大きかった要因は日本の高校だった。日本の高校では年度が3月終わり、4月に始まるの一般的なのし対して海外の場合は国によって違うが蓮が海外で過ごした高校は年度が6月に終わり、8月に新学期が始まるのだ。蓮は元々6月で年度が終わり次第編入したかったのだがここで第二の弊害、家族が出てきたのだ。


 無理はないだろう。まだ16歳の息子を母国といえど一人暮らしさせるのだから。父親が働いている蓮の家庭でもし蓮が一人っ子であれば母親と日本に帰国し暮らす、という選択肢が出来たがあいにく蓮には年上の姉、兄と妹がいるのだ。姉は働いているが日本ではなく、兄も大学生だがまたこちらも日本の大学に在籍していない。ましてや妹などもってのほかだ。


 この話は揉めに揉めた。元々蓮はあまりわがままを言う方では無かったが今回は引かなかった。しかし、それは親も同じ。可愛い息子の願いといえど今回ばかりはそう簡単に許すわけにはいかない。いくら毎年日本に帰国しているといえど休暇で過ごすのと暮らすのは全く違う。万が一の事があってもそう簡単には駆けつけられない。そう言っても蓮は聞かなかった。この話は兄弟全員を巻き込んだが誰一人として蓮を説得出来なかった。それもそのはず、全員が蓮の日本の暮らしへの強い憧れがあったのを知っていたからだ。


 最終的には親が折れ、蓮の夢であった高校生活が許された。しかし、これにはいくつかの厳しいルールがあった。もっとも、重要な成績や暮らし、生活費の浪費などそれは蓮もよく分かっていた。しかし、他にもあった。


 例えば料理や洗濯、掃除の仕方などは帰国する前から母親に教え込まれ、日本の教育カリキュラムもやり始めなければいけないなど大変なことが多かった。蓮の親もこれだけすれば諦めてくれるんじゃないか、という考えも少しだけあった。しかし、蓮は諦めることなく料理など一般的な家庭スキルは身につけ、日本の高校と海外の高校の勉強も両立して見せた。しかしそれらの準備期間を夏休みに費やした為新年度が始まり、日本への帰国が12月にずれ込んだのだ。


 幸い蓮の家庭は裕福なため、出費は重なるが日本で賃貸をかり、なおかつ生活費を渡す事は可能であった。その様な環境もあり今回連は日本に帰ってきたのだ。


「楽しみだな〜」


 そんな事を呟きながら、これからの生活に胸を躍らせバスに乗り込んだ蓮。


 これから始まる日本での憧れの学生生活。それがまさか2ヶ月後、彼女が出来たことにより楽しくなる事をまだ蓮は知らなかった。


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 皆さん、初めまして、Aries(アリエス)と言います。


 まず最初に、この作品を読んでくれてありがとうございます。これは自分が初めて手掛ける作品なので読んでもらってとても嬉しく思います。


 作品を描いた事がないのでストーリー構成や文章構成などが至らないと思いますがもし改善点などがあれば是非指摘して欲しいと思っています。また、誤字や抜け字なども同様です。


 この作品を読んでくださって本当にありがとうございます。次のエピソードも読んでくださると幸いです。

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