本日のごはん占い
kozakana
第1話 グラップリンは存在しないメニュー(中吉)
とろりとした食感と滑らかな舌触り。
確かな甘さとカラメルソースのかすかな苦み。
バリエーションは数あれど基本、プリンという冷菓の味は上記で構成されている。
子供の頃には学校給食でプリンが出た日は余り分を勝ち取るジャンケン大会が必ず始まった。
そんな、けっこう好きだったはずのプリンを食べることが減ってからだいぶ経ったあるとき。
女性を連れていくと非難され攻撃されるとネットで見た某イタリア料理ファミレスへ職場の後輩女子に連行されてしまった。
無理やりなクレーム客の電話対応を引き継いで言いくるめたお礼とのことだった。
「ほ~ら先輩、この前の残業の後で自慢してたカフェ・コレットっすよ~♪」
エスプレッソにグラッパを垂らしたカップを自慢げに見せびらかしてくる彼女。
「自慢はしてないし、なんすかその飲み方はと聞かれたから答えたまでだ」
ここは生ハムもサラミもうまいのに一部の女性は何が不満なのやら。
まあイタリアでの豚伝染病とやらでどれもメニュー表から消えてしまったが。
「なあ後輩、ところでそのグラッパを注文したのは自分なんだが」
「今日はあたしのおごりだから問題ないっすよ~♪」
「じゃあもう一杯注文するぞ。グラップリンをやるには残り分じゃ足りない」
「なんすか先輩、そのグラップリンって?」
「勝手に命名したアレンジメニューだよ。ここのチェーン店のプリンは食感も硬めでカラメルソースも苦みが強いだろ」
「そうっすね。だからあたしティラミスの方が好きっす」
「グラッパはほんのりと甘味がある。この透明なイタリアン焼酎をだな、こうする」
ちょうど少し前に届いたイタリアンプリンの上から残ったグラッパを全部垂らす。
「あああ~~っ!!! ほろにが系あまあまで絶対おいしいやつになった!!!」
おぼえたてのカフェ・コレットで酒の楽しさを学んだ後輩は目をキラキラさせた。
スプーンでえぐり取ったグラップリンのかたまりを見せつけてから食べる。
「少しグラッパ成分は足りないが確かにほろにが系あまあまな味だぞ」
「せ、先輩! つつしんでおりいってご相談があるっす!」
「心配するな。グラッパとイタリアンプリンをもう1セット注文する」
「あーそうじゃなくて……せっかくだから……その……言いにくいんすけど」
「パワハラなら聞くがセクハラなら人事の目崎さんだ。彼女は頼れる」
「はあ……グラップリンってバカっぽい頭悪そうな名前っすね!」
どうやら早合点したらしいが後輩が不機嫌そうにむくれたのはなぜだ?
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