父の抗がん剤副作用

抗がん剤の副作用。

その言葉は自然と何度も耳にしたことがある。

とてもしんどくて、その苦しみに耐えられない人もいると聞いたことがある。

副作用が辛すぎて抗がん剤治療を断念した人もいるとか…。


だから私の中では「抗がん剤は怖い」という認識がすごく強かった。


けど癌の治療に抗がん剤は欠かせない。

治療すると決めた以、上抗がん剤は避けては通れない道だ。


父の副作用は、2クール目で白血球の低下が強く出た。

普通の人なら7000くらいある白血球の数値が父は300まで低下した。

つまり感染症にかかってしまうと菌と闘う力がなく重症化しやすいということだ。

あと血が止まりにくくなっているので怪我にも注意が必要になる。


父は3泊ほど入院しながら抗がん剤治療を受けていた。

なので直後の状態はわからなかったけれど電話口の声は元気そうだった。

とにかく早く家に帰りたい父。

でも白血球の数位がもう少し上がるまでは退院できそうもなく、大の病院嫌いな父は「はよー帰りてぇわ。」と電話越しに呟いていた。


抗がん剤の副作用は、経験した人にしかわからない苦しみやしんどさがあるのだろう。

私は経験したことがないのだから軽はずみなことは言えない。

気持ちがわかるなんて、絶対に言えない。

だからこそ父のしんどさや辛さを受け止めたいと思っていたが、父は自ら私たちに「痛い」「しんどい」を言わない人だ。

もっと弱音を吐いてくれてもいいのにな。


退院が伸びたのは致し方ないことだけれど、実は丁度この頃、長男の職場で新型コロナのクラスターが発生し、長男は新型コロナウィルスに感染してしまった。

だからどちらにせよ父が今の状況で帰ってくることは出来なかった。

抗がん剤治療の真っ最中で白血球は低下中、しかも父が患っているのは小細胞肺がん。

絶対にコロナウィルスに感染させるわけにはいかない。


丁度父が入院中に長男が発症したので、父は濃厚接触者になることはなかった。

兄には申し訳ないがタイミングとしては絶妙でした。


長男は完全隔離で過ごし、他の家族がコロナを発症することもなく我が家は落ち着いた。

無事退院した父はその日に大好きなお酒を飲んだ。

「先生が飲んでもええ言ったんじゃ!」と得意げに(笑)


退院して過ごしている時は、父は癌治療中だということを忘れてしまうほどにいつもと変わりなかった。


そして抗がん剤治療3クール目で事件は起こる。




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