はじまり、おわり、そしてつづく。(仮)

YouthfulMaterial 文章部

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天使をみたわけじゃない。悪魔にささやかれたわけじゃない。

鏡に映った顔は、恨みを持って見返した。

その眼が、弱いところを冷たく射貫いた。


―空白に、気付いた。

あ、やめろ。その手で引っ張るな。

それなりに、この生活にも慣れたのに。

体温をうばうような手で気安く触るな。

また戻そうとするのか。


視界がぐにゃりと歪む。


待ってくれまだ―。


日々を重ねている。薄いページを積み上げている。

そこに滑り込ませるように、見えないように隠したあの思いや、あんなアイデア。

活かせないのを、時間のせいにした。

この積み重ねをつぶしたあいつは、そんな怒りを持っていたのかもしれない。

あんなに積み重ねたのに、軽い音がするんだな。

形にはしないようにしよう。


誰にもつぶされないように大事にしよう。

頭の中での妄想で終わらせておこう。

わかってる、それじゃ意味ないんだってこと。

それを口にしたら、変人扱いされる。

子ども扱いされる。


ぶつかり、躓いて。こんな痛い思いをするなら、あんな言葉を浴びせられるなら。

安全なところにいくほうがいい。

だってそうだろ。

なんで泣かなきゃいけないんだよ。

歯を食いしばってまで、夢をみなけりゃいけないんだよ。


それが、自分が望んでいなかった平凡なものであっても。

そうだよ。結局は凡人。一般人だ。

あこがれていた向こう側で生きる主人公ではない。


あんな変身もできない。

センターで踊る器量もない

自分だけの衣装なんてない。

一緒に苦しむ仲間もいない。

笑いあえる人なんてもってのほかだ。


なにが「人生の主人公は自分だ」だ。

なにもできない、今が答えだ。


―いや。

これも人のせいにしてるだけだ。

過去にとらわれて、自分の生きやすいようにしているだけだ。

なんていうループ。日々を乗り越えるだけの日々のために義務教育をおえたのか?


ふざけんな。

なにをしているんだ。


―あの時の自分の作品が並ぶ。

夏休みでしかたなくつくったオブジェ。

ゴミに紙粘土とビー玉をつめた、歪なペン入れ。

思い入れのない日記。

楽だからと逃げた観察記録。


表現も義務でなきゃしないのなら、いっそ全部捨てればよかったのに。

人に意見できる立場でもないと逃げるくせに。表現の時間をなくしたのは、自分だ。

逃げ場がなくなって、やっと腹を括ろうとするが…手が震える。

ただそこにある「自分」を取り戻せばいいのに。


「届けようとしたか?」

「いいや、届けるほどでは」

「また仕舞うのか?」

それは、いやだ。

いやだな。

うん。

このまま、死ぬのはいやなんだ。

「届け。届け。とどけ!!」

理解はしなくていい。聞いてほしいから、始まるなにかでいい。


あぁ。この道しかないんだったら、1人でも進むしかあるまいに…。


その先にあるのが、望んでいたものではなくても、もう進むことを決めたのなら―。


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