勇者パーティの大剣豪だったけど、生まれ変わったら何故か美少女になっていた上、メスガキ魔王の配下になりました
小弓あずさ
第1話 新たな物語の始まり
「……ここは」
目を覚ますと、そこは昔に一度だけ見た貴族用の牢獄を更に豪華にしたような場所だった。
豪華な意匠かつベッドや本棚、魔導具による水道、姿見などの高級な設備は確かに整っているが、間違いなく牢獄だ。
檻がついていて、窓にも同様のものがあった。
……待て、なぜ天下に名の轟く大剣豪で、なにより勇者の仲間であった俺がこんなところに?
記憶を探る。そして割り当てる。
脳を稼働させる。……負荷がかかっているのか、凄く痛いな。これは……封印されているのか?それとも、記憶が破損している?
記憶が破損するなど、ボケてしまった老人くらいのものだと思っていたが……。
頭の出来は良くないと自負しているが、メインの威名である『剣豪系』とは別に、サブの威名である『学者系』を取得してからは術式を活かすために色々と勉強してマシにはなったし、威名進化の四段階目……最終段階である『星の使徒』を名乗ってからは、地頭は悪くとも知識だけは学者並みとなった。
その過程で記憶を探る術も身に着けた。
俺の仲間は二人いた。全員が当代最強、いや、歴史上最強の冒険者パーティかつ勇者パーティだった。
殺戮の神すらも粉砕するほどの圧倒的な腕力と、抜群の器用さにより魔導具による補助を超一流の域でこなせる、歴代ぶっちぎりで最強の勇者。
武芸も術式も歴史に軽く名を残せる程度にこなせるし、蓄えた知識によって窮地をなんどか救ったりもしたが、仲間の中では器用貧乏なところが否めない……間違いなく仲間内では最弱の俺。
なんだかんだで色々なことをこなせた俺等二人とは違い、中級までの雷属性魔法と申し訳程度の探知や治癒しか使えない代わりに、圧倒的な魔力量と質によって雷を完全にシャットアウトする雷神すらも蒸発させるほどの魔法使い。
力関係は勇者>>>魔術師>俺といった感じだったろうが、最弱の俺ですら尋常ではない使い手だった。どこに行っても誰が出てきても恥ずかしくない無敵の勇者パーティというわけだ。
だが、そんな俺達でも百以上は死んだほど魔王軍は強い。
天神連合とかいう古の神々が唯一神に反逆するために作った組織すらも支配下においたくらいだから、とんでもないやつらだよ。
そして……天神連合を壊滅させ、魔王軍との最終決戦と言うはずだった。ああ、ここまでは思い出した。……なぜ、ここで牢屋に入れられる?
駄目だ、脳がエラーを何度も吐いてくる。思い出せない。
やっぱりこれは記憶の破損ではなく、意図的に封印されているな?
邪法でもなく聖法でもなく魔法でもない……魔王の特殊な力か?いや、感じるエネルギーはもっと別。
強いて言うなら旧神に近い……かな?別物ではあるのは間違いないが。
まあ、ここまで分析できたら破るのは容易い。
……ええい、プロテクトを突破してやったぞ!
異世界人からプログラミングだかの知識を教えてもらったのが役に立ったな。
で、記憶の中身は……。
「そうか、そういうことか……」
俺達はどうやら無事に魔王を倒したらしい。
だが、最終決戦で一番魔王相手に相性が良く戦えたのがよりにもよって俺で、集中的に攻撃されて、その戦傷によってパレードの少し前に死んだ。ということか。
……なら、俺は何故生きている?
それに、脳を分析してそこを足がかりに体も分析してみたが……恐ろしく弱体化している。
身体能力では旅立つ前の、ただのちょっと有名な剣豪だった頃以下だ。
星術も、他の術式も弱体化しているな、これは。
魔力質と知識、そして剣の技術は失われていない。それに魔力量も十分なだけは残っている……威名の方も、引き継がれている。まあ、最悪ではないな。
「……あれ?」
いや待て、弱体化以前に……肉体構造が半端なく変化していないか?
立ち上がって、下を向く。
やたらデカい胸に阻まれた。
誰の?……俺の、なんだろうなぁ。
女になった……のか?ああ、息子がない。どうしたものか……。いや、本当にどうしよう。
仕方がないので、鏡の前に向かって己の姿を確認する。
「……」
そこに映っていたのは、ありえないほどの美少女だった。
貴族としての風格、ちょっとテキトーでちゃらんぽらんそうな顔立ち。トレードマークとも言えた黄緑色の髪。ツインテール。
……俺を女にして、ちょっぴりだけ美化すればこうなるかな?といった感じのスーパー美少女。
見た瞬間、絶句してしまった。
そこまでナルシストではないつもりだったが、あまりにも完璧な美少女過ぎたから。
美の女神でもありえないほどの美少女だ。
そして、次の瞬間にはもっととんでもない事実に気づく。
……髪のあたりがなにかおかしい。
具体的にはアクセサリだな。
双頭の蛇がかたどられた髪飾りがついている。
……え?俺、魔王軍なの?
とんでもないことになった!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます