第46話 秘密の探検
「ねぇねぇ知ってる? あの空き教室の話」
「あれでしょ? 幽霊が出るってやつ!」
食堂で私たちの近くの席に座っている人たちが噂話をしている。
内容は学校の怪談話といったところだ。
この学園の1番上の階の左奥にある空き教室。深夜0時にその教室に行くと幽霊に会えるらしい。
私が幽霊を信じているかは、保留にさせてもらおう。転生している人間としてはオカルトを信じる気持ちもあるが、実際に見ていないものは信じない主義なのだ。
私の隣でご飯を食べていたクレアが青ざめている。どうやら幽霊とかの話が苦手のようだ。
ベルギアはというと全く気にせずに唐揚げを頬張っている。
大皿の上にタワーのように積み重ねられていた唐揚げも残り1つとなっていた。
「ゆ、幽霊って本当にいるんですかね?」
「絶対にいないとは言いきれないわよね」
「存在 不可視」
どうやらベルギアがいうには「存在しているが普通の人には見えない」らしい。
「ベルギア様には見えるのですか?」
「不明」
「そ、そうなの……」
それにしてもクレアの様子がおかしい。
まるで本当に幽霊を見たかのようだ。
最初は怪談話に怖がっているのかと思ったが、この感じはその域を越えている気がする。
「クレア? 顔色が悪いけど……」
「いえ! ですが最近不思議な夢を見まして」
「説明希望」
「私が見た夢というのは、例の空き教室にいる夢だったのです。そこには1人の美しい女性がいて、美味しいお茶を用意してくれていて……これ以降の記憶は曖昧なんですけどね」
なんだか頭が痛い。前回頭痛がしたときはシリーズの内容を思い出した。もしかしたら今回も何か関係があるのだろうか。
「ルーシェ様?」
「いえ、なんでもないわ。別に怖い目に遭ったりはしていないのよね」
「はい! むしろ起きたときの気分はとてもよかったです! でも、怪談話として空き教室のことが語られているので少し不気味です……」
その日の夜。私が眠ろうとしていたら自室の窓からノックの音が聞こえた。
時計を見るとまだ日付は変わっていない。
カーテンをしているため、窓の向こうには誰がいるのかが分からない。
律儀な泥棒かロキの二択だろう。先日、ベルギアの家に行ってから不審な態度が増えたので少し心配になっていた。
もしロキならこの際、問いただそうかと思い、勢いよくカーテンを開くと……
「夜分失礼 会話要望」
私服を着たベルギアがいた。
「ひぇっ!」
誰かいると分かってはいたが、窓にぼんやりとベルギアの顔が浮かんでいるのは中々に怖い。
とりあえず窓を開けてベルギアを部屋に入れる。
「どうしたの?」
「私 空き教室 探検」
「もしかして、クレアが言っていた夢の内容を確認するの?」
ベルギアは「正解」と言って頷いた。少しの間なら家を抜け出してもバレないだろうが……校内には巡回する警備員がいるのではないだろうか。
「空き教室 危険 確認」ということで確認しに行くらしい。
元々学園長から
「無理を通して入学を許可しているのですから、たまには見廻りくらいは手伝ってください」
と言われていたそうだ。
今回のことは学園長も知っているらしい。けれども、噂の全貌は明らかにできていないようだ。
「私 守る バレない お願い」
「うん、トモダチのお願いだしね。それに、夜の学校探検って一度やってみたかったの!」
もし、昼の頭痛が記憶が戻る前兆ならば空き教室に行ってみる必要があるだろう。
私服に着替えた後、ベルギアに俵担ぎ状態で屋敷の外まで運ばれた。
そして、私たちの秘密の探検が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます