怪異世界の旅事情

秋丸よう

【プロローグ】在りし日の記憶

「にいちゃ、にいちゃ」

「遊ぼう!」


――もう、待ってよ、みんな!


 楽しい楽しい、いつもと変わらぬ日常。

 建物に囲まれた、まるで箱庭のような中庭で駆け回る子供たち。僕も一緒になって庭を駆け巡る。

 草の匂い、土の匂い、空の匂い。

 どれも僕にとっては幸せの匂いだった。

 普通の人から見たら幸せとは言えないかもしれないけど、僕は幸せだった。それはみんなも同じで。


「にいちゃ、大好き!」

「もっと遊んで!」


――僕もみんなのこと、大好きだよ! ずっと、ずっーと!


 親がいない子供は愛を知らずに育つと言うけれども、僕は確かに『愛』を知っていた。みんなも愛を知っていた。

 

 そう、僕たちは孤児。親のいない、親からの愛を知らない子供。

 それでも僕たちは『家族』だった。僕らの先生、僕より年上のお姉ちゃん、お兄ちゃん、僕と同い年のみんな、そして僕たちが守るべき存在の弟、妹たち。

 誰かを愛すること。僕たちはこれが出来た。

 僕たちには親はいなかったけど家族がいた。それだけで充分だった。僕たちはこの箱庭の中だけで充分だったんだ。


 なのに――




「蜉ゥ縺代※縲∝勧縺代※縺雁?縺。繧?s」

「逞帙>繧」

「諤悶>繧医≧」


 どうして? どうして僕たちがこんな目に遭わないと行けないんだ? ただ僕たちはこの箱庭で幸せに暮らしていたかっただけなのに! どうして! 何にも悪いことなんてしてないのに!


 

 僕の家族はみんなやられてしまった。あれは何を喋っているのか分からない。

 あれはみんなだ。

 僕は家族を置いて生きることなんてできないと思っていた。

 でも、でも、僕は必死に逃げた。だって、みんなのこの声だけはちゃんと聞こえたから。


騾?£縺ヲ縲∫函縺阪逃げて、生きて

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