カワイイハツミ

 人には自分の容姿がどのくらいかを知る機会が必ずある。鋭い人は、早いうちに自分がどのくらいかを理解するし、鈍い人でもいつか必ず分かる。


 そして、それを気づくきっかけ次第で、その後の自分への思いも随分と変わる。好きな人に振られたのなら変わろうと努力するし、街中でスカウトされたのなら、自分はこのままでもかわいいと自信が持てる。


そういう面で、自分の容姿を理解するきっかけは人生のターニングポイントのひとつとして大事だと思う。だからきっと、私が卑屈になってしまったのも仕方がない。


だって...

私にとってのターニングポイントは

       「いじめ」   

          だったのだから....




~~~~~~~~~~~

小学校低学年の頃の私は、周りと比べて劣っている子だったと思う。みんなが授業の時間だけで理解できる問題が私には全然わからなかったり、運動も人一倍できなかった。


変わった子。それが、その頃の私のクラスメイトからのイメージだったのだと思う。そのせいで、私に近寄ってきてくれる人がいなかった。


私は普通じゃない。それを、幼い頃の私は理解せざるを得なかった。いつも皆んなに避けられて1人でいる私は、みんなが楽しそうに遊ぶのを眺めることしかできなかった。


羨ましい、いいなぁ...なんて気持ちが積もっていき、いつしかみんなと同じになりたいと思うようになった。そうすれば、きっと私もみんなと遊べると思ったから。

でも、私には才能が絶望的になかった。


だから、私は人の何倍も努力をした。みんなが遊んでいる時間を、私は勉強に回した。みんなが、家でテレビを見ている時間を、私はランニングをして費やした。


辛い時もあった。結果が全然実らなくて、辞めてしまおうと思ったことも何回もあった。でも、みんなと遊ぶため、友達になるためだと思って頑張った。


そんな努力のおかげか、私はだんだんと成績を上げ、運動もできるようになり、最終的にはクラス内で1、2を争うトップ成績になっていた。


普通なら、努力が実って嬉しいと喜ぶ人が多いだろう。でも、幼い頃の私は、みんなと同じになれなかったことに対しての不安を持っていた。


ただ、この不安はすぐに消え去り、代わりに喜びが生まれた。


「佐藤ちゃんって凄かったんだね!ねね、友達になってよ!」


なんと、努力して凄くなったことで、私に初めての友達が出来たのだ。


ずっと欲しいと思ってきた友達をとうとう手に入れた。そんな状況で気持ちが昂らないわけがなく、私はぴょんぴょん跳ねたり、身体中を使ったりして喜びを表現した。


そして、喜びと同時に

(もっと頑張れば、もっと友達が増える!)

なんて考えたりしていた。


そしてそれからは、友達を増やすために、ずっとずっとず〜っと努力を続けた。日々の勉強、日々の運動を欠かさずにやった。そして、私がより凄くなっていくにつれて、私の周りの人も増えていった。


(あぁ、嬉しいなぁ。たくさん友達が出来た!みんなとずっと仲良くしたいなぁ...そのためにも私、もっと頑張ろう!)


私の頭の中はそんな思いでいっぱいだった。



でも、凄ければみんなと仲良くできるなんて時間はいつまでも続くはずがなく、直ぐに過ぎ去っていくことになる。




~~~~~~~~~~~~~~

「ねぇねぇ、〜ちゃん。一緒に遊ぼ?」


「...ごめん、ちょっとやることあるから。」


「そっか!大丈夫だよ!」

~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~~~

「ねね、-----ちゃん。ここ、教えてあげよっか?」


「...いい。先生に教えてもらう。」


「そ、そっか。分かった。」

~~~~~~~~~~~~~



~~~~~~~~~~

「ねね、~~~~~ちゃん。前みたいに今度私の家来ない?一緒に遊びたいなぁって...」


「......やだ。」


「そ、うだよね....」

~~~~~~~~~~~~~~


小学6年のいつ頃からか、私から友達たちは離れ始めた。最初は、忙しいのかな?とか、先生の方が分かりやすいのかな?とか思っただけで、全く気にしなかった。


...ううん、多分、その頃から少し分かってたと思う。でも、そんなはずないって自分を必死に説得してた。


じゃないと、私の血の滲む努力が無駄になるから。そんなの悲しすぎるから。


ただ、そんな私でも、拒絶がエスカレートしていけば、現実逃避が出来なくなる。


どうにかして、皆んなとまた仲良くならなきゃ。どうにかして、また友達を作らなきゃ。


そんな焦りがどんどん私の中に積もっていった。ただ、「どうにかして」という方法を、この頃の無知な私はひとつしか知らない。成功例がひとつしかない。



「凄くなる」だだそれだけ。



だから、そんな私が出来るのは、より頑張ることだけだった。


毎朝早くに起き、ランニングをし、学校から帰ってきたら、最低限のことをする時以外は、四六時中勉強。これを毎日続けた。


ずっと。


ずっとずっと。


ずっと、ずっと、ずっと、ずっと....






そんな生活を続けていたある日。急にある生徒に話しかけられた。その時の私は、嬉しい気持ちでいっぱいだったのを覚えている。


やっと、やっと報われた!

これでまた友達が出来る!


そんなことばかりを考えて、話しかけてきたのが、今までほとんど関わりを持ったことがない"異性"であることなんて気にしなかった。


そんなウキウキな私は、素直に彼の話を疑問に思うことなどなく、素直に従い、彼の後ろをついていった。


彼につれて行かれるにつれ、だんだんひと気が無くなっていく。そこで、普通の人なら、この後何をされるのか察せる。でも、私は恋愛に疎く、告白という言葉すら、碌に理解していなかった。


だから、人気がないとこに行くのは、「友達になってください」って言うのが恥ずかしいのかな?なんて呑気に考えてた。


だから、彼が顔を真っ赤にしながら好きだと言ってきた時、頭が真っ白になった。


そして、分からないなりに真剣に考えて、自分が好きと言う気持ちを理解してないのに付き合うのは不誠実だと思い、断った。



普通、告白は承諾するか、断るかを自分で選ぶ権利がある。だから、断ったとしても、人にとやかく言われる筋合いはないはずだ。




でも、私はそれが"いじめ"の火花となった。



告白を断った次の日。私は、多くの女子から言葉責めを受けることになる。


「-----君の告白断るとか、調子に乗るのも大概にしなさいよ!」


「で、でも...好きでもないのに付き合うのは不誠実だって思っ『うるっさい!!』っ!?」


パーンッ


乾いた空気を叩いたような音が響き渡る。


あまりにもいきなりで、一瞬何が起きたのか分からず、ただ床に倒れ込む。そして、遅れて痛みがきて、慌てて頬を抑える。そこではしま目で説得してる最中に思いっきり叩かれたのだと理解した。


「痛いよ...なんで.....」

震える声を抑えて必死に訴える。


「あんたが調子に乗ってるからよ!みんなより少し可愛いからってなんでもしていいと思わないで!」


「私が可愛い?そんなことが理由で避けられてたの?」


自分の疑問が自然と口から漏れる。


自分自身、容姿なんて気にしたことがなかった。だって、見た目なんて生まれ持ったものなのだからみんな違って当たり前。気にするものではないと思っていたから。


そんなうっかり漏れた疑問の言葉は、私の頬を叩いた子ヲ含める多くの子に聞こえてしまう。そして、その瞬間、みんなからの敵意を向けられた。


「そんなことって!お前、調子に乗るなよ!」


お腹を蹴られる。


「何が恋愛に疎いだよ!かわい子ぶんな!きもいんだよ!」


髪を引っ張られる。


「お前がいなければ、私にもきっとチャンスがあった!」


足を引っ張られる。




痛い。

痛い痛い。

痛い痛い痛い。


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い


手足が痺れる。頭がズキズキする。ポキリという音さえした。

そして、最後にはだんだんと体の感覚がなくなっていった。


(...なんで、なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだろう。私はただ、仲良くなろうと頑張っただけなのに。分からない...分からないよぉ!!!)


そんな心の叫びをあげる。助けてと叫びたくても、体が痺れて口を動かせない。逃げたくても、逃げれない。私にとって、この時間は、地獄そのものだった。


地獄に堕ちることになった理由。それを、殴られながら必死に探した。それを見つければ、これからはこんな目に合わないと思ったから。


そんな時、ひとつのセリフが頭をよぎる。



『あんたがちょうシに乗っテるからよ!みんナより少し"カワイイ"からってなンでもしてイいと思ワないで!』



その瞬間、私は理解した。

そっか。私って人より可愛いんだ。

そして、





かわいいことは「罪」なんだ、と...






いつ頃だっただろうか。そう、だいぶ暗くなった時間帯だ。そのくらいになって、私はようやく地獄から解放された。


痺れる足を引きずり、今にもはずれそうな右腕を左手で押さえつけて、ヒタヒタと家に帰った。そして、家に着いてから、手洗いもせずに真っ先にある場所へ向かう。


手にあるものを取る。ジジジと刃を出し、それを顔に近づける。


カワイイハワルイコト。ワタシハカワイイラシイ。ミンナワルイコトハトモダチニナッテクレナイ。ナラ、可愛く無くなるしかない...



痛みなんて感じなかった。

顔を顰めもしなかった。

ただ、これでみんなとまた仲良くなれると思い、嬉しい気持ちでいっぱいだった。







 






だから、













私は笑顔でおでこの部分に思いっきり傷をつけた。












_________________________________________

「作者」

前回の話を読んで、佐藤がまともだと思ったそこのあなた!彼女も普通ではないので安心してください!(どう狂ってるかはこれからのお楽しみ)僕の小説でまとも(普通すぎる)な人を出すつもりはないからそこはよろしく!



はい、では、ここからは真面目な話を。

投稿頻度遅いのは許して欲しいです。今文化祭の準備とかで忙しいのです。どうか気長に待って欲しいです。


サポーターになってくださった方方、新しい投稿を待ってくださってる方方本当にすみません...なんとか頑張るので、これからも応援してくれるとありがたいです!


最後に、誤字報告等があればよろしくお願いします!♡、☆を押してもらえると、モチベに繋がるので、是非是非お願いします!




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