第22話 贈り物

 夏休みが終わり、バスケ部にはテレビや新聞など沢山の取材が入った。

バスケ関連の雑誌や新聞にキャプテンのインタビューや写真が掲載される。


来年これをユンがやるのかと思うと、見たくてたまらなくなった。

絶対にキャプテンになって欲しい。

邪魔になる事は絶対にしたくない。


 地方局の情報番組で、バスケ部の練習風景などを2週に渡り放送する事になった。

母親と一緒に録画をしながら見た。

チラチラとユンの姿が映っていてニヤニヤしてしまう。


「わぁ、白くて綺麗な子が居る!」


「その子がユンくんだよ。シマエナガ。」


 照れ隠しに言う。

ホッキョクオオカミに似てると言ったが、そうは思っていない。

本当はシマエナガに似てると思っていた。

いや、たまにホッキョクオオカミだけど。


「あ!この子?この子かぁ。カッコいいじゃん!あんまり映んないねぇ。ってシマエナガて(笑)あんた好きだよね。」


「うん(照)」



 2週トータルしても、ユンはあまり映っていなかったが、2年エースとして1人だけのシーンがあった。

永久保存版としてBlu-rayにダビングし、映画のDVDの棚にしまった。



――――――――――――――――

 9月末ごろになってやっと、男子バスケ部への取材や祝賀会、さまざまなお祝いイベントが終わり学校が静かになった。



「もしもし? 珍しい時間だね。」


「外行くって言ったら何も言われなかった!(笑)出て来れる?」


「え?そうなの?行く!ちょっと待っててね!」



 自転車を走らせながら、色んな思いが浮かんでは消えた。

嬉しいけど、前みたいには思えない。

ユンの母親の顔がチラチラと浮かんで、悪い事をしている様な気分になる。

でもやっぱり嬉しいんだけど…。



「全国制覇おめでとう!お祝いパーティーしなきゃね!」


「アミの入賞がわかったら一緒にやれるな!」


「それ言わないでよ!考えないようにしてるのに!」


「あはは。結果が楽しみだなぁ!?」


「意地悪だなぁ。ったくぅ。」


「これ。 遅くなってごめん。」



 白い小さな紙袋を渡された。



「な、何?これ。」


「7月、誕生日だったんだな。」


「え?誰に聞いたの?」


「ジアちゃんからLINEが来てさ。」


「あぁ、ジアンかぁ。」


「うん。アミの誕生日7月なの知ってる?って。でも大会始まっててプレゼント買う時間も無いしさ。LINEで簡単におめでとうも何か違うなって…」


「ありがとう…。中見ても良い?」


「うん。だけど、俺初めてだからこうゆうの。何か違ってたらごめん。」


「ユンくんが選んだ物なら何でも嬉しいよ?」



 紙袋の中には長方形のケースが入っていて、アクセサリーだと直ぐにわかった。

ケースを開けると中身はブレスレットだった。



「可愛い!ありがとう!(笑)」


そう言って顔を見ると、照れた顔をして笑った。


 小さな小さな月や星などのチャームが連なっている、ゴールドのブレスレット。

嬉しくて指で触って見ていたら


「着けようか?」


 と、言われた。


「うん…」


 箱から取って手渡し、左手を差し出した。

着けている姿を見ながら、ぼんやり考えた。


(今まで彼女もいないのにこんなテクニックをどこで身につけるのだろう…)

(天性??)

(だとしたら、モテるに決まってる)




「可愛い♡」


「シルバーとゴールドがあって迷ったんだけど、時々ゴールドのネックレスを着けてたから…ゴールドにした。」


「あぁ。お母さんにね、私の肌や顔にはゴールドが合うって言われてゴールドを選ぶようにしてたの。嬉しい!ありがとう。」


「うん。」


「ユンくん誕生日はいつ?」


「俺は、3月。」


「3月かぁ。まだ先だね。」


「明日もこの時間に出られそうなら出るよ。」


「あまり無理しなくて良いよ。怒られてまでして欲しくないから。電話でも充分だよ。」


「うん。じゃ、様子見ながら。」


・ 


 この日から、ユンの母親を気にしながらも会える事が嬉しくて、週の半分を会って過ごす様になった。



――――――――――――――――

 10月下旬のある日の夜、電話が鳴った。

母親が出た。


「はい!もしもし!? あ!先生!いつもお世話になっておりますぅ。娘が先生が大好きみたいでぇ。 はい。はい。え!? 本当ですか!?ありがとうございますぅ!!あ、はい。代わります。


 母親が涙目になっている。


(もしかして!?)


 心臓がぎゅーっと痛くなった。

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