私たちの故郷、茅ヶ崎
おじぃ
1,白浜沙希と歩く秋の茅ヶ崎
「やっほーい! やあやあ皆さん! 本日はようこそ
え? 茅ヶ崎に来てない?
いやいやいいよ存在を知ってもらえるだけでもありがたい! 江ノ島とか鎌倉は知ってても西隣の茅ヶ崎は知らない人多いからね!
さてさて私はいま、何やら騒々しい茅ヶ崎公園野球場の前を通りすぎて海辺の国道を跨ぐ歩道橋の上。ここもきょうは立ち止まっちゃいけないみたい。
理由はわかってる。私の中学の先輩がライブをするから。リハーサルもやるから音を聴くために人が滞留すると危ないってこと」
「こんな調子で自撮りしながら街を歩くわけですが、完全に独り言マシーン。今回はこれといった観光アトラクションのない茅ヶ崎を、どうにかこうにかして何かしら行きたいと思ってもらえる場所ができたらいいなと思って、私ほか三人とリレー形式でレポートします!」
「茅ヶ崎といえばとりあえず海! とりあえず生! みたいな感じでとりあえず海に行っておけば少なくとも美味しいお店はある。海の家でナンパできない季節でも美味しいものは年中たらふく食える」
「特にサザンビーチ周辺は飲食店がたくさん! 海の幸、カフェ、ハワイアンレストラン、チェーン店のファミレスとかラーメン屋さん、いろいろあるよ!」
「だけど人が何万人来るかわからないライブ期間中の4日間はどこのお店も満員御礼行列必至かも。
サザンビーチ以外にも、駅周辺に居酒屋、牛丼チェーン、カフェ、ファストフードなど。
「さて、飲食店を紹介しながら歩いていたら波打ち際から百メートルくらいのところにある茅ヶ崎サザンCの前に到着。きょうはたくさんの人が群がっています。このモニュメント、当時7歳の男の子がデザインしたんだって。すごいね、シンプル・イズ・ベスト! Cの途切れた部分に立って手足を着けると永遠の愛がどうとか。なお茅ヶ崎在住の私、これまで破局したカップルは山ほど見ております。中指立て合ったり暴言吐いたり、いろいろ。まあ、なんていうの、愛は真心だけど、その真心っていうのが難しいんだよね、きっと。ちょっと喉が渇いたから、サザンCの目の前にある自販機でサイダーを買おう」
ピッ、ピピッガコン!
ボタンを押してICカードをタッチ。天然の材料だけでできた甘酸っぱいサイダーが出てきた。
カチカチッ、シュワ~、ごく、ごく。
「うーん、うまい! もう一口!」
「ねえママー、あの人独り言言ってるよ~」
「しっ! ああいう人には関わっちゃダメ!」
いつしかの寒い日に
はいはい、気を取り直してレポート再開!
ロケ場所移動のため一旦録画を切り、サザンCの前から来た道を戻る。
左には市営プールの跡地。高校時代の担任でいま30代の‘まみちゃん’はよくここで遊んだらしいけど、私の記憶にはない。初夏は浜昼顔の天然お花畑になり、ピンク、ホワイト、グリーンのコントラストがほんわかする。なんとなく癒されるんだよね、あれ。
「はい、ということで浜に降りてみました! 鳴く鳥はカモメじゃなくてカラスとトンビ。カーカーアホアホぴーひょろろ、足元見れば、はとポッポ」
周りに人はあまりいなくて、いちばん近い人はまで70メートルくらい。ラブラドールレトリバーを散歩させている女の人。
夏の香りが残る浜の寄せては還す波。引き際にきらきらきらときらめく瞬間に、心奪われ言葉を失う。
この静かな海が、私は好き。
さてさて、茅ヶ崎市民の私はそろそろボランティア会場にでも向かいますかな。夕方、高砂緑地に集合!
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