第12話

「うわぁ……うわぁ……」


 師匠による、ユウラシアの稽古を見ていると、小さな頃に軽いトラウマとなった思い出が蘇ってくる。


「あの……大丈夫ですか?」


「だいじょばない……うわぁ」


 顔を両手で覆い、それでも気になる稽古の様子をチラチラと見ながらも、また隠してしまう俺の様子を見て、隣で座っているテレジアが心配そうに見てくる。


 現在、ユウラシアは師匠に何も出来ずに、スナイパーライフルで殴られている。俺の銃の弾速に慣れているおかげで、目で何とか終えているようだが、それだけでは足りない。


 何せ、弾は真っ直ぐにしか飛ばない。故に、弾道予想が出来るのだが、師匠は細かなスピードのアップダウンや、前後左右、はたまたジャンプなどの行動を組み合わせているため、培った能力が機能できてない。


 それでも、強化学習体ならば、やっているうちに目が慣れ、攻撃を捉えられるようになるのだが────


「ん?今ガードしたね?それじゃあもっとスピード上げていこうか。金剛力、四倍」


「うぐっ」


 ────捉えた直後に、こうして師匠が自身の身体強化をしてしまうため、全くもってユウラシアが反撃できない。うっ、またトラウマが……。


「あぁ惜しい……っ!頑張ってユウラシアさん……っ!」


 恐らく、テレジアからは師匠の動きなど全く見えて居ないだろうが、ユウラシアの行動を見てどんな状況か判断している。


 凄まじい判断力だな。流石は物語終了時にはAランク最強と言われているだけの事はある。


 ちなみにだが俺は、幼少期の頃文字通り血を吐くくらいこの修行をやったことがある。俺の最高記録は金剛力16倍である。


「ん、もう来たね。それじゃ、金剛力五倍」


「んぐぐぐ……っ!」


「………………」


 なんか、この調子だったら明日くらいには抜かれてそうだな。









「はいおつかれー。初日に私の金剛力八倍かー……恐ろしい成長速度だね。ほんと」


「…………………………」


「あぁ!ユウラシアさん!!」


 訓練が終わった瞬間、真っ白になって燃え尽きたユウラシアが地面にぶっ倒れた。それを見たテレジアが観客席から慌ててユウラシアの元へ向かう。


「お疲れ様です師匠」


「ふぅー、久々にいい汗かいた。最近、魔物相手だと本調子になる前に皆が倒しちゃうから、少し消化不良でね」


「それはいいことなのでは?」


 師匠達が本調子にならならということは、軍そのものの練度が高くなっている証拠。今はサイレンがなると必ずSランクの人がローテーションで7人戦場にいるようになっているが、この調子だったら少なくなるかもしれないな。


「それでも、やっぱり少しくらいは満足に体を動かしたいものよ。最近は歳かどうか知らないけど、ちょっと体重落ちにくくなったし」


「?」


 前半は聞こえたのだが、後半は小声でなんて言ったのか分からず首を傾げる。


「それにしてもだけど彼、恐ろしい成長速度ね」


「……えぇ、そうですね」


 師匠がテレジアに介抱されているユウラシアを見るので、俺も釣られて見る。現在はテレジアに肩まで手を回され、上半身を起こした揺さぶられている。


「英雄……ね。本音を言えば半信半疑だったけど、彼は間違いなく次代の英雄ね」


「はい。それは間違いないと思います」


 今現在は、まだどうしようも無くなった時に学園長が出張って魔物を殲滅することがあるが、あの人が戦えなくなった時に、先頭に立ってみんなの中心となるのはアイツだ。


「今後が楽しみね」


「えぇ」


 勿論、あいつが英雄と呼ばれるようになる頃、俺はその時存在していないだろうが。



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二日間投稿休んじゃってごめんね。モン○ンダブルクロスが面白くて。


【次章予告】


「あなたの頭の良さを買って、頼みがある」


「────いいよ」


「キャー!?アークくんがなんでか知らないけど虹色に光ってるー!!」


「出来損ないだが、どうやら聖者殿に気に入ってもらえるくらいには役に立ったか」


「聞いて貰えますか?私の過去を────」


「リオーネ────俺のパートナーに、なってくれますか?」


次章、『推しの目の前で盛大に散りたい』

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤクロユリ

ㅤㅤㅤㅤ   ㅤChocolate Lily

 ㅤㅤThe curse of love-×-[愛故の呪い]




 あ、ミストルティンの弾速ですが、秒速7キロに変更しました。

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