第14話

 かつ、かつ、とハイヒールを鳴らしながら、優雅にこちらへ歩いてくるアルテラ。ふわりと、歩く度に揺れるウェーブがかかったプラチナブロンドの髪とその美貌は、正に女神と形容するに相応しい容姿だ。


 しかし、俺はそんなアルテラの顔を睨みつける。


「まさか、見逃せとかいわないよな?」


 左のスナイパーライフルをアルテラに向ける。もし、かつての仲間だーとかくだらない理由で殺すのをやめろと言うのなら、何も言われないように1度、こいつの感覚神経を遮断する。


 しかし、予想に反して彼女はふるふると首を横に振った。


「いいえ、アークさん。そんなことは言いません。かつて、私たち教団がやってきたことを思えば、殺すのは当然────むしろ、私たちのように一部が生き残り、監視付きではありますがこうして外を歩けることが奇跡なのです。本当に、彼とはただ話を……いえ、ケリをつけに来ました」


 ジっ、と白銀の目を見つめる。はぁ、と息を吐いたあと、銃口を破戒僧からズラし、アルテラへと蹴る。


「二分だけ時間をやる」


「感謝します」


 神経を遮断され、動けない破戒僧に対し、地面に膝をつけて話始めるアルテラを見る。


「余計なお世話でしたでしょうか、アーク様」


「……いや、機関に連絡を入れたのは正しい選択だ。たまたま、事情を知っていた人間がアルテラに連絡したんだろう」


 戦闘中、横目で確認してはいたがリオーネが端末を触っていたことは確認していたので、機関に連絡を入れてるんだろうなとは予測していた。


 それで、事件対応にくるのは師匠の誰かか、一緒に襲撃作戦に参加した誰かだとは思ってはいたが。


「……二分経ったか」


 リオーネと話すのを辞め、アルテラへと目を向けると、頷いて合図を出した。


「じゃあな破戒僧」


 こうして、ようやく教団との戦いが終わったのだった。








「ミクリオ」


「……今更、裏切り者に話すことなど何も無い」


「あなたには無くとも、私にはあります」


 ふぅ、とアルテラは一つ息を吐くと、鋭い眼光で破戒僧────ミクリオを見下した。


「私が────あなた方がやっていたことは間違っていたのです」


 その言葉を聞いた瞬間、ミクリオの何かが切れ、激情が体の底から湧いてきた。


「何も────ただ玉座に座っていただけのテメェに!その言葉だけは言われたくねぇ!『聖者コピー実験』の許可だって!テメェも認めただろう!」


「えぇ。だって、あの時の私は、目標さえ達成できれば、アークさん以外の人間なんてどうでもいいと思っていましたから」


 アルテラのかつての目標は、アークと結婚し、その全てを手に入れること。


 自らを女神と形容したのも、現人神とするアークの妻となる=自分も神と同系列に見なすことで、その威光を利用し、アークが望む世界を作り出そうとしていた。


 だがしかし、それも自身が恋慕していたアークの手によって粉々にぶち壊されてしまうのだが。


「『私達は、全て間違っていた』。それだけ言えれば十分です。ミクリオ、地獄で反省してなさい」


「クソっ……クソっ……瘴気を癒せる人を増やそうとして何が悪いんだよ……!」


「手段が問題だったのです。親を殺し、子供を攫い人体実験など言語道断────せめて来世は、瘴気に狂わされない人生を」


「ちくしょう────ガッ!?」


 ドパン!とミクリオの後ろから発砲音。もちろん音の正体は、アークが構えていたゲイ・ジャルクからだった。


「あぁ……すま、ない……アリ……サ」


 最後に、ミクリオが見たものは、瘴気によって命を失った、愛すべき妻の幻影だった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さてさて、これにて第2節は終了となります。

次話からは、第3節主人公の強化フラグを建てるにはと────いきたいところですが!あと一話だけ挟むんじゃよ。


ですが、ぶっちゃけ言うと次話は読んでも読まなくても構いません。なんじゃそらと思うかもしれませんが、マジで読まなくても構いません。でも、読んだ方が面白いと思います。


こんなので一話使うなよwwと思う方もいるかもしれませんが、お付き合いくださると嬉しいです。


ではでは皆様、次話でお会いしましょう!バウバウ~



P.S

この作品の累計PVが10万人を超えました!ありがとうございます!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る