第22話 男

"瓜坊と会えたことは 今の僕にとって 僅かな支えだった...でも、どんなに 探しても ユミさんは見つからない...胸が張り裂ける思いを 初めて感じ これから先の不安が 僕を追い詰める...




そんな時、僕の目の前に 一人の男が現れた。


その男は、初めて街に来た時に 軍人の中にいた一人だった。


ユミさんが、別の軍人に 撃たれそうになった時に 止めた軍人だった。


そいつが何故ここに?僕が死んだのか 確かめに来たのか......死んだと思ったから ここに捨てられたんじゃ......僕の体が 敏感に震え 言葉がでない 頭ではいろんな事がめぐって 少なからず混乱して 男が迫ってきてるのに 体も動かす事ができない......立てずにいる 僕の目の前に男が立ち塞がる そして ゆっくりと男の手が 伸びる


「......生きてたんだな」


そう言って 僕の手を掴んだ!


「うっわー」


やっと出た言葉が 叫び声 僕はこの世の 終わりを見苦しく 声に出してしまった。


男は何も言わず 引っ張りあげ 僕を立たせると


僕の手を 自分の肩に回し 僕を支え歩き出す...


 何処に向かっているかも 分からずされるがままに 支えられ歩いた。


もう何も考える 脳は僕にはなく 力もなく僕たちの後を着いてくる 瓜坊に お前は逃げろと 心で願っていた......


道中の沈黙が より頭の中を 恐怖で埋め尽くす


何処を歩いてるのかも 何をされるかも 分からず 時間の長さが 僕を息苦しくする......


男の足が止まり 建物の中へ ゆっくりと進む 目を反らし 見ようとしなかった 光景が僕の目に戻る ここは......見たことのある この引き戸


ガラガラ


病室?!


......ここは...病院?頭の中が混乱してるのか 男に支えられ ベッドの並ぶ 奥へと進む 一ヶ所だけ カーテンに囲まれていた。


何故か心臓が ドクドクと早まる


男は静かに カーテンを開けた......


僕の目から 大粒の涙が零れ 嬉しくても 涙がでるんだと 初めて知る......


「ゆ...ユミさん......」


僕は 男の肩を 払いのけ ユミさんのベッドの前に 膝まつき 眠るユミさんに


「......よかった...無事で...ユミさん ユミさん ユミさん......」


男が そっと僕の肩に 手をおくと


「...意識は戻ってない」


と、囁いた。


僕は男を睨み付け


「何故?お前は なんなんだ?どうして......ユミさんは ここに?なんなんだよ......」


 僕の問いに 男が一通の 手紙を差し出し 病室の外へ出ていった。"


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