第6話 感情

"あんな風に 泣くなんて 思ってもなく 僕の感情が揺れ動く


お互いに 話をする わけでもなく ただ一緒にいる関係 女にとって僕は......いやいや 頼まれただけだ......


この時から 僕は 少しづつ 女の事が 気になり始めていた。




父さんが 死んだと 聞かされてから 女は頻繁に出かけ 戻ってくるたびに ボロボロで


そんな事が 続いてた ある日


いつもより 帰りが遅く 僕は不安で...どうしようもなく 落ちつかず 暗い山道を ライト片手に 下ってた 暫くすると......五メートル位先に 人影が こっちに向かって 歩いてくるのが 見え......とっさに ライトを消して 木の陰に身を潜め 通り過ぎるのを 待つ


なかなか 通り過ぎないと 思っていると


ドサッ‼


なんだか 妙な音が......気になり 覗いて見ると 人が倒れていて まさかと 思ってライトで 照らしてみた......


「!?」


僕は 慌てて駆け寄り 大変な事態に......女のコートは 血だらけで どこがどう ケガしてるかも分からない。とにかく 背中におぶり 山道を必死に戻った。


僕たちがいる 今の場所は 雨風が凌げる 洞窟のような穴で 早くそこまでと 無我夢中で 走った


心の中で 急げ!急げ!と 何度も 自分を急かし


やっとの思いで たどり着いた。


女を毛布の上に 寝かし コートを脱がせ 何処からの血か 震える手を 必死に動かせ 探した.....


「どこだ どこなんだよ!」


服をめくって 見てみると 脇腹から 血がじわじわと 滲み出ていた。


一瞬 目を反らしたが なんとか 血を止めなければと 心の中で 焦るな 何とかするんだ!慌てるなと 何度も繰り返し 冷静を装いながら......女のリュックを ひっくり返し 中身をあさり タオルを手に取り 傷口を両手で 抑え続け 血が止まる事を祈った。


女は息をしているが 意識はなく 僕は夢中で 呼び掛けていた......


「おい!大丈夫か!がんばれ!今 血を止めてるから 頼む!がんばってくれ!」


そんな事を 何度も 繰り返し......どれだけの時間 繰り返していただろう......気がつくと 血は止まっていた。


安心したのか 力が抜け 尻餅をついたが それも


つかの間で 女の体が 震え始め 顔が青ざめ また緊迫した 空気が流れ 始める......


毛布を掛けて 必死に 女の体を擦り 温め続けた。




ようやく 震えは止まったが 熱が上がっただけで


苦しいのは 変わらない......


薪に火をつけ 貯めていた 雨水を沸かし 沸いたお湯にタオルを くぐらし 女の顔を拭いた。


そして 体も......女の体には 無数の傷跡が..拭きながら 涙がこぼれ 僕の 涙腺は......崩壊した....."


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