第5話 涙

"あれから 半年程たち あの衝撃的な 出会いから


僕たちは 地下水路を 抜け出た後 女の車で 一夜を明かした。


この時 何処へ 向かおうとしているのか 分からず......頭の中は 不安でいっぱいで 眠れるはずもなく あの爆破は きっと ニュースになって 街中はちょっとした 騒動になるものだと 思ったりしてたが......


次の日の朝 女がラジオで ニュースを 聞いていたけど 其らしき事は 一ミリも 話題になってなかった。


この時 簡単に もみ消す事が できるんだと...もしかしたら 今までも こんな風に ことをもみ消したり してたのか......と 思うと 胃液が喉まで 込み上げて 吐き気を覚えた。


この時 女が自販機で 買った 温かいお茶を 僕に......それが やけに心にくる 温かさで ホッとしたのか......涙が溢れたのを 今も覚えてる




この頃 僕たちは 一つの所に とどまる事は なかった......ほとんどが 山での生活で サバイバルのような 暮らし......人という人はいなく 今はどんな 状況なのか 僕は知るよしもなく


たまに 女が出かけていたので きっと 何か情報を 収集してる事は 間違いないと思う。


そんな生活が 慣れてきた頃


女が いつものように 出かけて 数時間後


戻った様子が いつもと違ってて......僕は 違和感を覚えた。


なんだろう この感じは 緊張がはしる中 沈黙が続く......この緊張が怖かった よく分からないが 何故か 怖くてたまらない......




どれだけ 時間がたったのか ようやく 女が口を開いた


「......お前の父親 渉さんが......殺された」


「......悪いけど 僕は父親の顔も 知らない!だから......悲しいとか そう言う 感情は まったく 湧かない......ただ そうなんだって 思うくらいなんだ......」


それは そうだろ?会ったことが ないのに 急にそんな事 言われても......薄情かもしれないが本当の気持ちだ。


そんな事を 思ってると


一瞬 女は悲しい 表情を浮かべ


「そうか......」


そう言うと それっきり 何も言わず 背中を向け


タバコを 吹かしてた。


僕は その姿を見てると なんだか 分からないけど 無性にイライラして


「なんだよ!親が死んだら 皆 悲しいと思うなよ!そんなヤツ ばっかじゃねぇんだよ!」


この感情が 何処から きてるのか 分からなかった......なんで 腹が立つのか......


それに 僕がただ 吠えてるだけで 振り向きもしない女に 怒りを ぶつけるかのように 女の肩を思いっきり 引き寄せた


振り向いた 女の顔を見て 怒りが一瞬で 消え言葉を失う......


女の顔は 涙でぼろぼろで グシャグシャで.....


何も 言えるはずがない...もし 言えるなら....


ごめん......それだけだった"


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