剣豪異世界へ

巫玲

第0話

 誰か作り上げた花畑で一人の男が生き絶えようとしていた。彼の顔には後悔の念と安らぎが混ざった様な顔をしていた

儂も耄碌したものだかような若造に遅れをとるとは人の一生では研鑽が足りぬ願わくば、かつての剣の冴えが欲しいものだ。

「それよりも」そう呟き帯に刺さった簪とそばに咲いていたオオデマリを一輪摘み「すまぬ、儂に才があればお主との…」そう口にし、彼の手より力が抜け地に落ちる、力の抜けたその手から花が落ちる手の落ちた先に桔梗の花が咲いていた桔梗に彼の手が当たり花が彼に寄り添う様に倒れる。意識の途切れる刹那此方に手を差し伸べる女性の幻を見た。その幻に向かい手を差し出そうとする。彼の肉体にもうその力さえも残されていなかった。彼の意識は闇へと包まれる。しかしもう機能していない彼の耳に知らぬ声が耳に入る

『貴方を相応しい世界へ送りましょう』

「相応しき世界か…誰かは知らぬが感謝する嘸かし素晴らしき強者達と死合う事が出来るのであろうななれば我が研鑽の果てへと至ることも出来よう」

『ですが、一つ必ず達成してもらいたい事が有ります悪き神討伐をして頂きたいのです。』「神殺しか、力を求めた儂が神仏を滅する事になろうとはだが、かつて剣神と呼ばれた儂にお誂え向きよな、あい分かった」『感謝します、人の身では難しいでしょう、貴方を人ならざる、鬼人としてかの世界へ送りましょう』

儂の視野は眩い光へと包まれる


「気圧されるな、我らの強い意志があれば打ち倒せる」とは言ったが悪き神影響がここまで強いとは気性の比較的大人しいホーンベアがここまで凶暴化するとはそれに毛皮も硬い、私もここまでか私の頭に走馬灯が走る

「角の生えた熊か。儂のいた世界とは違うな」よわい60歳程度はいくであろう老人が突然現れホーンベアに立ち塞がる。「下がりなさい。殺されたいのですか」その言葉に老人「獣に殺されるのならば儂の生涯も所詮その程度だったというだけの話【朧霞流一の太刀月曇り】」鞘より抜刀された途轍もなく速く速さ故にその刃はまるで霞の様に歪み刀身を目で捉えることさえ叶わなかった老人の剣はホーンベアの首を捉え一閃で切り裂いたまるで柔らかい物を切る様に簡単にそれでいてその刀身には血が付いていなかった「これならば問題ないか」


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