第5話 勇者の家

 最初の街を男一人女三人で歩いて行く。女性三人は個性的で全員が美少女さんだ。

 当然街の人も振り返って見る人も居る。


 リアル世界の俺じゃ絶対にこんな展開はない。

 金を払って出張デートサービスみたいなのを利用すればあり得る展開かもしれないが、このクラスを三人雇ったら一日十万じゃ無理だろうって感じ。


 ふと思うが、俺の顔ってどんな状態なのだろう?

 この世界に来て鏡を見ていないから自分の顔がわからない。

 こんな美少女達と行動できるのだから、きっとカッコいい顔なのだろう。



 フレイアが俺の少し前を歩き、インテグラとセレス(本名セレスティーン)は俺の左右で女子トーク中、俺は挟まれている状態で日本人の俺には理解出来ない単語が混ざっている。


 ゲームの夢の中だと思っていたがどうもそうでもない感じ。

 やけにリアルだ。


 でも今の所は夢の中としておく。


・・・・


 目の前を歩くこのフレイアは凄いケツをしている。

 革製のロングパンツ姿だが、戦士だけあり筋肉量が半端ないのだろう。

 つき上がるような丸く大きなお尻に革のパンツがぴったりと張り付いている感じで、下着のラインの凹凸が見えているような状態だ。


 普通に歩いているのだけでそのお尻が魅力的に動く。

 ちょっと目の行き場に困るが、眺めていると眼福だ。


「エド、さっきからフレイア姉のお尻ばっかりみているっすね」

「別にケツを見ていた訳じゃないよ、フレイアが先に進んでいるからな、少し前の地面を見ながら歩くと、ケツが視線に入るだけだ」


セレスはふーん、そうっすかって感じでこっちを見ていているが、フレイアがピクっと反応する。


「さっきからケツケツって私のお尻を見ているのか?」


 フレイアが振り向くと真っ赤な顔をしている。


「だってフレイアが俺の前を歩いているんだ、どうしてもそうなるだろう」

「エドはフレイア姉のお尻が好きなんだって」


「なっ、何をいっているのですセレス!」

「だってずーっと見てるっすよ」


俺自身は女性と付き合ったことがないので女性の集団の中に入るとこんな会話になることも知らない。

面倒な展開になるのはゴメンだ。


「おいおいやめてくれよ」

 俺の声のトーンが下がると、セレスも反省したかのように態度を改めた。

「冗談すっよ、冗談」


 馬鹿話をしながら、街の中を進んで行くとゲームの時と同じ場所に勇者の家らしき建物があった。


・・・・


たしかこんなデザインの家だったな。

ゲームのグラフィックと実際の建物を比べると、家の前に花壇や井戸がありでゲーム中でも勇者の家とすぐにわかるデザインをしている。


もともとゲーム開始時はこの家から母さんに送り出されて王様へ謁見に行くところから物語が始まるので、ゲーム中は勇者の家を探すなんてことはしないのだ。


悩んでいる俺を見てフレイアが声をかける。


「ここなのか?」

「たぶんここだ」

「おい、たぶんって自分の家だろ」


「久しぶりに帰ってきたからな」

「久しぶりってどのくらい空けたんだよ、普通は自分の家くらい覚えているだろ?」


 フレイアは呆れたような顔をして俺の方を見ているが、建前上久しぶりに帰ってきたことにしているが、俺だって初めて来る家だ。

 ドアを開けて他人が出てきたら困る。


「自分の家だろ、家の人に私たちのことを紹介してくれ」


 家のドアをノックすると、しばらくして女性の声が返って来た


「はぁ~い今でますぅ」

 声の感じはかなり若い、ゲーム中は音声なんかなく文字だけだが、話し方は同じ感じだ。


 ドアが開くと身長百四十cm位の小柄な女性が立っていた。

「あらエドちゃんお帰り、ドアなんかノックするからお客さんだと思ったわ」

 小柄な女性はゲーム中の俺のお母さんだが、父さんが行方不明になり俺を勇者として立派に育てた優秀なお母さんで、チャイルドコンプレックスの強い人だった記憶がある。


 ゲームの世界では容姿までは良くわからなかったが、これが俺の母親かよ?って思うほど若い。

 一応俺はゲーム中十六歳位の設定からスタートして今は二十六歳くらいなはずなのに、このお母さんはどうみても十代後半、フレイア達より若干大人びている程度でシワ一つない。


 そんな母さんが俺にお帰りのハグをする。

「エドちゃんよく無事に帰ってきたわぁ」


 当然後で見ていた三人は固まっていた。

「エドの恋人か?」


普通の反応なのか理解に苦しむが、母さんの容姿を見れば当然の反応なのかもしれない。

 俺も驚いたし。



「あら、エドちゃんのお客さん、もしかして彼女さん達なのかな?」


 さっきのケツ事件もありフレイアが彼女と呼ばれ、そのワードで赤くなってしまう。

「あらあら可愛いわね、私はエドの母よ、みなさんもエドちゃんの事をよろしくね」


 セレスがフレイアの事をしっかりしろとケツを引っぱたいている。


「さぁさぁ玄関で立ち話も何ですから、お家に入って」


 家の中に入るとこの世界の標準的ご家庭+ちょっとだけ広い作りになっている。


 一階にかまどが一緒になった広間があり、別の部屋が二つ、設定では父母の部屋と、爺婆の部屋。

 二階には俺の部屋と妹の部屋がある。

 ゲーム中では幼い設定の妹だが、ゲーム開始から十年経過しているはずなので当時五歳位の設定だったから、多分成人しているはずだ。


 今の所家の中では会ってない。


「母さん、妹はどこに行ったんだ?」

「メイアちゃんは勇者学校に通っているわぁ、そろそろ帰って来る時間ね」


 妹の名前ってメイアって名前だったのか、今日初めて知った。


「ちょ!母さん、メイアまで勇者にさせるのかよ今危ないって知っているだろ」

「メイアちゃん、エドちゃんより強いわよぉエドちゃんが行方不明になって十年間あの子も必死にがんばったのよ」


 軽いノリの母さんだけど、俺が十年間行方不明になっていて何事もなかったかのように応対していた事になる。


 そんな話をしていると玄関ドアが開き一人の少女が入って来た。


「ただいまなのだ」

「おかえりなさい、メイアちゃん」


「あ、エド兄ちゃんおかえりなのだ」

「た、ただいま」

「なに驚いてるの?久しぶりのメイアに驚いちゃったのかな?」


「ああ、大きくなったなぁって思った」


 身長は母さんよりも少し大きめの百五十センチ位、赤色のショートヘアで母さん似で美人だが、おっとりとした表情の母さんと違い可愛い系ではなく美人系の顔付きをしている。

 泣きぼくろがある事で実年齢よりも年上に見える感じがするが、将来銀座のスナック等で確実に男の人生を狂わせるような女になりそうな予感がする美形である。


 話し方が幼い感じがするが、ゲーム中もこんな台詞だったよなと思い出す。


「エド兄ちゃんの後に居るひとってなんなのだ?」


 ゲーム中の話で、ゲーム中にメイアに話しかけると幼いメイアに付きまとわれ、家から出られないイベントがある。

 母さんに話しかけると、メイアは母さんの方に行くのでその隙に家から出るみたいなイベントだ。


 メイアは極度のブラザーコンプレックスの設定だったのを思い出す。

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