第2話 レベル1の勇者と美少女三人組

 月曜の朝からは普通に仕事に行き、疲れて帰ってもあの異世界ゲームの夢をみる事はなかった。

 週末の夜、酒を飲みながら懐かしのゲーム機を操作している。


 前回のセーブデータを選択しているのだが……

 作った覚えがないセーブデータを見つける。


   エド LV99

   エド LV55

 →*エド LV01


 セーブスロットが三カ所あるが、二個は覚えている。

 名前はエド LV99やLV55の表示がされているので明らかに俺が子供だった頃にプレイしたデータだ。


 三個目のデータは記憶がない *エド LV01 こんなデータを作った覚えがなく、プレイヤーネームの前に”*”印が付き表示もバグっている?


「たしかこのゲームスタート時にコマンドを入れると開発コンソールだっけ? デバッグモードに入れたんだよな」


 独り言をつぶやき、ビールを片手に曖昧な記憶を思い出す。


 デバッグモードとはこのゲーム自体は一人プレイヤー専用だが、ゲーム機本体に二プレイヤー用のコントローラーが接続されている状態で特定の操作をすると、ゲーム中に開発用コンソールが追加される機能だ。


 チートでもするのかよ、と思いつつコマンドを入力すると入力成功を表す「ピコーン」と電子音が鳴る。

 この歳でマトモにレベル上げなんかしている時間はないからなと。


「20年ぶりでも子供の頃に覚えたコマンドも覚えているんだなぁ」

 と、つぶやきながらゲーム画面を見ると酒が回ったのか急に眠くなった。


 あれ……どうしたのだろう。


 無理せずに寝よう……俺はTVの前でそのまま寝てしまった。


 ・・・・


「おい、エドどうしたんだよ」

「んあ?」


 気が付くと同じ夢だ。

 目の前にフレイアの巨乳があり、俺は驚き仰け反ってしまう。


「おお?すまん」

「お前急に寝やがってビックリしたぞ」


 机で座ったまま寝ていたようで、フレイアが俺の肩を両手で揺すりながら俺を起こそうとしていたようで、さっき仲間になったばかりのフレイアが心配そうにこっちを見ていた。


「俺、寝てたのか、どのくらい寝ていたんだ?」

「私が二人の仲間を呼んで自己紹介が済んだ辺りで急に寝ちまいやがって、時間は十分ない位だが揺すっても起きないから驚いたぞ」

「すまんすまん、ここまで来る前に王様との謁見に行っていたからな、ここに来て気が抜けたのかもしれない」

「そうだなお前は勇者だったんだよな、王の前じゃ緊張もしただろう」


 改めて自己紹介が始まる。


 魔法使いのインテグラ 身長は170cm位で美しく整った顔つき、見た感じはどこかのお嬢様で何となく気品がある美人だ。

 動物で例えるならネコのような感じであり、どことなく鋭い感じがする。

 スラッとした体形で出る所は大きすぎず小さすぎずの体つき。

 良く言えばスレンダー、悪くは言えない。

 ローブを羽織っているので細かい所まではわからない。


 銀色の長いストレートの髪は腰当たりまで届き冒険者とは思えないほど綺麗に手入れがされ、手には魔法使いらしい三角帽子を持っているので普段は帽子を被っているのだろう。


 聖職者のセレスティーン、長いのでセレスと呼ばれている。

 身長は160cm位で童顔ではあるが可愛い系の美人だ。

 聖職者とは思えないほどフランクな口調で挨拶された時は少し驚いたほど。

 赤に近い茶色の髪は背中辺りまでありセミロングである。

 天然ウェーブのかかったようなくせっ毛の状態になっていて髪の毛の量はとても多く感じるが、それが幼い感じを強調し可愛らしさを表している。

 服装は聖職衣と呼ばれる青紺と白でデザインされた特別な服と短い円筒形の青紺色の帽子を被っているようだ。


 なお、フレイアの姿を革製のインナー姿と表現してしまったが、ライダースーツのような革製のピタッとした服装である。

 今は酒場の中なので胸元はバッサリと開き谷間を強調しているが、この服装の上から鎧などを装備するのだと思われる。


 これほどの女性達なら他の冒険者や勇者が放っておくとは思えないが、なぜか俺の仲間になってくれたのだ。


「オレはエドだ、よろしく頼む」

「わかりましたわ」

「わかったっす」


 二人と握手を交わし、まずは目的について話を進める事にした。


「俺の目的は魔王討伐だ、お前たちもそれに付いてきてもらう事になるが大丈夫か?」

「勇者の手伝いができるなら歓迎だ、この二人も大丈夫だぞ」


 フレイアがリーダーなのか彼女の発言にインテグラ、セレス共に頷きながら同意した。


「お前たちの強さを教えてほしいが大丈夫か?」

「ああ構わない、私はLV5、インテグラとセレスはLV3だぞ」


 オレは自分のステータスを開こうとしたが、どうやるんだ? 開く事が出来ない。


 アイテムバッグの中を見るとゲームのコントローラーみたいな物が入っていた。


「ファミコンのコントローラーっぽいな」

「おいエド、ファミコンって何だ?」

「いや独り言だ」


 コントローラーを手に取るが、どうやら三人には見えていないらしい。


 コントローラーを操作するとステータス画面が空中にいきなり現れた。


「さっきからエドの様子が変だぞ、お前どこを見ている?」

「気にするな、勇者特有のスキルみたいなのがあるんだよ」


 フレイアの目線が何となく困った様子で、顔が何となく赤くなっている。


「さっきから私達の事を凝視しているみたいで、なんかエロいぞ」


 全然そんな気はないが、たまたまステータス表示の一部がフレイアの胸元にあったりしてそこを読んでいただけなのだが……勘違いされている。


「すまんスキルで俺自身の強さを確認していただけだ、俺のLVは1だ、すまんがサポートを頼んだ」


「問題ないっす」

 セレスが返答してくれて、いよいよ街の中への移動が始まった。


 ・・・・


 街中を移動していると、セレスが人懐っこい感じで気軽に話しかけてきた。


「エドは武器等の装備品があるっすか?」

「オレの装備はこの服と回復ポーションだけだ、王様からは旅支度用に百ゴールドをもらっただけだな」


「たった百ゴールド? あの王様、この状況が理解できてないっすよ、勇者を大量募集して数で押す作戦っすよ」


 確かに謁見の間には勇者と呼ばれる男女達が大量に城に呼ばれていた事を思い出す。


「ずっとそうなのか?」

「ここ数ヶ月は勇者が大量に呼ばれていますわ、私達も他の街から来て勇者に誘われるのを待っていた所であなたに声を掛けられたのですわ、ねっフレイア」

「我達もこの街に入って酒場で休んでいる所でエドに声を掛けられたのですぞ」


 三人組と会ったのは偶然というより必然のように出会った感じなんだな。


「そんなに勇者が居るのなら、すぐに魔王が討伐されて片付きそうだけど」

「それは現実を見るとわかるっす、私は聖職者だから三人パーティになるまで色々苦労したっすよ」


 どんな苦労があったんだよと思ったが、それを話す前に武器屋に到着したのだった。


 武器と防具の絵が描いてある看板の店だ。

 これもゲーム世界と同じ。


 店の中に入ると兜をかぶり引退した戦士のような男が一人で店番をしている。

「いらっしゃい、なんのようだ」

 男はがさつな挨拶をしこちらを見る。


 店内を見ても値段も何も書いていない武器や防具が並んでいる

「装備品が欲しい、どんな物があるんだ」

 店主が予算を聞いてくると、それらしい物を教えてくれた。


 ・皮の盾 五十ゴールド

 ・こんぼう  三十ゴールド

 ・どうの剣 百ゴールド

 ・かわの鎧 八十ゴールド


 どうの剣は予算オーバで買えない。店主に予算が百ゴールド位と言ったので含まれているのだと思う。


 今の所持金は九十九ゴールドだ。

 どうの剣が百ゴールドでは買えないし、かわの鎧を買ったら武器がない。

 この状態ではこんぼう+皮の盾しか選択肢がない。

 武器と防具それぞれを購入し初の装備品となった。


 しかし王よ、魔王討伐に行かせるならせめてもっと予算をくれるとか武器を支給してほしいと思う。


 ショボすぎる初期装備だ。

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