第23話 抵抗②
戦闘が始まってから数十分が経った。すでにおとりのために配置していた大隊は最終防衛ラインまで後退しておりあと少ししたら罠が発動する。
「そういえば、今日はお前の部下は引き連れてきてないのか?」
「あいつらは海軍の人間だからな。陸戦では活躍できない」
「でも、あいつら戦闘できるんだろう?」
「そりゃ、戦場で生き残ってきた人間だからな。銃同士での撃ちあいだって何回も経験してる。ただ、一応あいつらは司令官だ。貴重な司令官を失いたくない」
「なるほどな」
「それで作戦のほうはどうだ?」
「今のところは順調だな。敵戦車と歩兵戦闘車はこちらの機械化歩兵師団との戦闘で手いっぱいだ。それに第6歩兵師団も死地に入り込んできている」
「わかった。十分に引き付けることができたら大隊を撤退させてくれ」
「了解だ。これで敵が打撃を食らってくれればいいんだがな」
「少なくない数の敵歩兵は始末することができるはずだ。ただ、敵狙撃部隊はどうにもならないな」
第6歩兵師団というと帝国陸軍の中で唯一の狙撃大隊を保有している。彼らは狙撃のプロフェッショナルの集まりなので正直対処が厳しい。
「敵部隊が最終防衛ラインを突破しました!」
「わかった。おとりの大隊に撤退命令を出してくれ。同時に周辺に展開している部隊に作戦開始の合図を送れ」
「了解です」
俺の命令により戦場が動き出す。すでに相当数の死傷者を出している大隊は敵に背を撃たれながらも後退を始める。そしてその背を追うように敵師団が奥地に入り込んでくる。
周辺の展開していた部隊はそれを取り囲むように行動を開始。さらに包囲を外から破ろうとする敵部隊を始末するためにいくつかの大隊が包囲網の外側に展開する。
こうして今まで敵部隊が突破してきた塹壕は一気に死地へと生まれ変わった。
「包囲成功しました!」
作戦の成功に司令部が沸く。
「包囲を破られないように慎重に殲滅を開始してくれ。機械化歩兵師団には敵戦車をこちらに寄せないように誘導させろ!」
「了解」
こうなれば不測の事態が起きない限り俺たちが動く出番はもうほとんどない。ホッとした気持ちで椅子に座る。
「こりゃもう敵は出てこれないな」
「不測の事態が起きなければ大丈夫だろう」
「それに関してももう大丈夫だと思うぜ」
「なぜだ?」
「第6歩兵師団の師団長はそんな胆の座ったやつじゃない。すぐに包囲されたことにビビッて撤退するはずだ」
「なるほどな。だが、そういう慎重な奴も今回に限っては厄介だ。一回の戦いで敵の戦力が大きく削れるほうが楽だからな」
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