第20話 反旗⑳

「…世間一般的に言えば戦艦は航空機には負けません」


「…というと?」


「ただ、自分個人の意見としては戦艦一隻と航空機であれば簡単に撃沈させることができると思います。もちろん艦隊がいるのなら話は変わりますが」


「そうか…わかった。戦闘はもうすぐ始まるはずだ。すぐにでも戦闘のできる状態に移行しておいてくれ」


「了解です」


俺はそれだけ聞くと海軍基地を後にする。


そして3日後、ついにアイリス公爵家の使者がイズミルに到着した。


アイリス公爵家からの使者は第2遊撃艦隊に所属している駆逐艦3隻を引き連れてイズミルまでやってきた。


「君がエミル・アカル君かな?」


「はい」


「そうか。私はガイム・アイリス、アイリス公爵家の次男だ」


彼を海軍基地にまで迎えに行っていた俺は軽く会話をすると実際に対話をする屋敷まで向かう。


そして屋敷にある臨時の指令室で対応する。


「それでは君たちが考えている戦略を聞かせてもらおうか」


「はい、それでは自分から説明させてさせていただきます」


俺は最初にそう断ってから地図を使いながら戦略を説明する。ガイム様は軍部の人間ではないので専門的な戦略を説明したところで分かるのかどうか謎だったがそこはちゃんとわかっているようだ。


一つ一つの説明を理解したうえで細かい質問をしてくる。


「それで喫緊の課題である帝都防衛隊との交戦はどこを想定しているんだ?」


「アカル侯爵領の北東部にあるこの場所で戦闘を行う予定です」


俺は地図を指さしながらそういう。


「なるほど。敵の戦力の予想は?」


「帝都防衛隊とその指揮下にある3大隊。ほかには第23歩兵連隊を想定しています」


「なるほど。それに対してこちら側は第3、4歩兵師団と第8機械化師団、それに協力を申し出ている貴族たちの私兵たちで行くのか?」


「はい。出し惜しみはしません」


「なるほど。それでは一尋ねよう。この反乱に私たちが参戦するメリットを教えてくれ」


「…」


この反乱に公爵家が参戦するメリット。それはもちろんたくさんある。例えば今の皇帝の暴挙を許さないとか。…でもここで求められているのはそういうことじゃないと思う。そういうきれいごとではなく本当に心の底から参戦したいと公爵家が思う理由。それは…


「この反乱が長引いた場合、我が国に他国が侵略してくるでしょう。そうなってしまえば今まで長い間我が国が固めてきた経済基盤が大きく崩れることになります。今の国にはそれを解決するほどの力はありません。遅かれ早かれ国は弱体化し滅びることになります。幸い今のアカル侯爵家には相当の軍事力があります。アイリス公爵家が参戦しなくとも持久戦に持っていくことは可能です。そうなってしまえばアイリス公爵家も国も地図上からなくなってしまうことになるでしょう」

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