第10話 反旗⑩ シオンside
エミルがイズミル海軍基地に向かっているころ、シオンはアカル侯爵家の私兵たちの訓練場へと向かっていた。
まさかエミルが帰ってくるとは思ってなかったね。…それも特大の厄介ごとを抱えて。
とはいえこれも一人前の侯爵家当主になるための訓練だと考えればいい機会なのかもしれない。そんなことを考えているといつの間にか訓練場の前までついていた。
もちろん門番もついているけど僕は顔パス。ここにもたまに顔を出しているから知り合いもだいぶ増えた。
訓練場の中では兵士たちがいくつかのグループに分かれて筋トレだったり実戦的な実弾発射訓練だったりとこなしていた。筋トレをしているグループの教官をしている人物がこちらに気づくと駆け寄ってくる。
「シオン様!どうされたのですか?」
「各部隊長を呼んでくれるかな?少し話したいことがあってね」
「了解しました」
筋トレグループの教官はそれぞれ違うところで教官役をしている部隊長に集まるように伝える。少ししてすべての部隊長が集まったから僕は話し始める。遠巻きに訓練中の兵士たちがこちらを見ていることもわかっているけど、どうせ今回の件はすぐに末端の兵士にまで伝わるので別にとがめない。
「それで話したいことというのは何でしょう?」
「まだ確定ではないんだけどね。もしかしたら近く戦いがあるかもしれない」
「…それは本当ですか?」
「うん」
「それで相手というのは?」
「帝都防衛隊だよ」
僕がそう言うと訓練場全体がざわめく。
まぁ、当然だろう。帝都防衛隊というと実戦的な部隊ではないけれども、帝国の管轄内の部隊であることに変わりはない。
「帝都防衛隊…ですか。各軍もそれに協力するのですか?」
「いや、すべてではないと思うよ。そのためにエミルが離反工作をしているからね」
「エミル様も動いてらっしゃるのですね…」
「それで今の部隊状況としてはどうなっているのかな?」
「陸戦隊は現在すぐにでも戦闘可能な部隊が3大隊、教育中の部隊を合わせたら4大隊です。海上部隊は重巡洋艦が1隻と軽巡洋艦が3隻、駆逐艦が4隻、その他の輸送船などが30ほどです」
「なるほど。僕は戦略のことがわからないからいまいちだけどうちの部隊だけで帝都防衛隊と戦うのはさすがに厳しいかな?」
「そうですね。帝都防衛隊だけならまだどうにかなるかもしれませんが、それに属している他部隊であったり近衛師団なんかが出てきたらひとたまりもないかと」
「了解だよ。…あとは領内で新しく兵士を募ってみてくれない?できるだけ人数を多くして戦いたい」
「了解いたしました」
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