SEVEN TRIGGER
匿名BB
prologue
Prologue1
ー20XX年某日・アメリカ合衆国・ワシントンDCー
「君と私が出会った時にした契約内容は覚えているね?」
スーツを着た1人の男が机の引き出しからM9ハンドガンを取り出し、マガジンを装填しながら俺に言ってきた。
「勿論覚えてるよ」
スーツの男がこちらに銃を向けてきた。俺はそれを避けようとせず、抵抗もしない。
「隊員7名中6人が無事、1人が
スーツの男はM9のセーフティーを外して撃鉄を起こす。距離は5m、この距離なら素人でも外さない。
「ああ、間違いない…」
「なにか言い残したことは?」
スーツの男が取り出したM9のトリガーに指をかけながら聞いてくる。
「今回の件は全て俺の責任だ。他の隊員の責任は一切関係ない。だから俺が死んだあと、あいつらのことをよろしく頼む」
「分かった。君の頼みだ、必ず守る」
「最後まで…色々迷惑かけて悪いな…」
「ああ…では、さらばだ‼︎」
パンッ!!
スーツの男は銃弾を放った…
このたった一発の銃弾が、のちに世界の命運を大きく分ける。
1年後
ジリリリリリリ‼︎
「…ん」
カーテンの隙間から朝の日差しが家に差し込み、俺は覚ます。右目を擦り伸びをしながらスマートフォンで時刻を確認すると午前8時を過ぎた頃だった…
今日は大した予定は無いが、店の食材がそろそろ切れる頃だったので買出しに行こうと思っていた。二度寝したい身体を頑張ってベッドから起こし、洗面台で顔を洗う。
鏡にはボサボサの黒髪で、開かない左目、さらに左目の上から左頬にかけて過去に切り裂かれた傷跡、そして左肘から先に義手を装着している青年の顔が映る。
右目で自分の寝癖の状態を確認し、髪を整えてから朝食の準備する。最初は慣れなかった隻眼片腕のこの身体とも、かれこれ何年もの付き合いで、今では義手がなくても不自由なく生活が送れるようになっていた。
トーストとハムエッグを作って食べながら、「フォルテ・S・エルフィー」こと俺は、テレビのチャンネルを適当に回してニュースを見る。
「最近の日本人は、銃に対しての考え方が甘すぎる!所持を認めていること自体間違っている!」
「でも、テロや魔術が当たり前のこの時代、対抗するための手段として銃がどこでも簡単に手に入るというのは、か弱い市民にとってはありがたいのではないでしょうか?私は自衛のために持つのは有りだと思います」
「そんな甘いこと言うから、馬鹿が調子に乗って、銃や魔術を使ったテロ事件を起こすんじゃないですか!そんなことも分からないのか!」
テレビの中で、なんかの専門家同士が互いの意見で言い争っている映像に俺はため息をついた。
(でたよ…またこの話題か。相変わらず日本人ってのはこういう解決しない話をずっと言い争ってるからいつまでたっても進歩しないんだよな。)
朝食を食べ終えて外出するために寝巻きから服に着替える。
最近の日本は銃に対しての規制が甘くなり、申請を出せば警察や自衛隊以外の一般人でも簡単に銃が手に入るようになった。最近では学生に銃の扱い方を教えるような学校も珍しくないし、日本の他のどの国でも銃を持たない国はないんじゃないかと思うくらい銃を所持することは当たり前となっていた。
なぜここまで銃に対する規制が甘くなったのか、主な理由としては、世界中で激化するテロや、最近発見されつつある「魔術」を悪用する輩への対抗策として銃の規制が世界的にも甘くなっている傾向があるのだ。
銃が多く出回ればテロなどによる犠牲者が増えるのではと思うかもしれないが意外にそうでもなく、実際に人質テロ事件が起きても武装した人質が内部から制圧したケースや、女性が強盗に襲われた際に持っていた銃で応戦し撃退したなんてケースもあり、凶悪事件が増えた一方、犯罪による死亡者が減ったのはある種の皮肉なのかもしれない。
(さてと、そろそろ行くか)
俺は食器を片付けて、腰に小太刀の勢州桑名住村正、自称「村正改」と左足に愛銃のHK45を装備して家を出る。扉を開けて外に出ると、眩しい日差しが全身を照らし、春風が着ていた服をなびかせる。いつもと同じ気持ちのいい朝だ。
俺が今住んでいるこの町は日本の太平洋側に面していて、漁港があることで有名だ。町では市場が盛んに行われていて、漁港で取れた海産物や雑貨はもちろん、それ以外にも、市場の裏では密猟された武器やドラッグなどの違法製品を扱うような店も散在しており、世間的には闇市場なんて言われてたりする場所でもある。
本来であればそういった店は違法なのだが、お金が大きく動く市場なだけあって警察や政府もなかなか手出しできないらしい。それもあってかこの町は、元犯罪者や密猟者、賞金首のような流れ者が多く集まると場所としても有名なのである。
まあ若干カオスな町だが、住民はお互いの素性の詮索をしないという暗黙の了解からか治安そこまで悪くなく…争いが少なく、よそ者に優しいこの町は俺にとっても非常に好都合な場所なのだ。
「今日はちょっと冷えるな……」
木々が生い茂って日差しが遮られたトンネルのようになった坂道を下りながら俺は両手で身体を摩った。日本の4月はまだちょっと肌寒く、黒い長袖Tシャツとジーパンで家を出た俺は歩きながら少し後悔した。
今住んでいる家は町から少し離れた丘の上にあり、家の周囲は木々に囲まれた森になっていて、町から見ると山肌の一部が禿げたような感じになっている。家から町に行くには丘下正面の坂道を徒歩か車で下るしかないのだが、今日は別にそこまで急ぐ用事もないし、天気も快晴だったので徒歩で向かうことにした。
(まあ歩けばちょっとは暖かくなるか……)
身体を暖めるために少し早歩き気味に坂を下っていく。
だが俺はこの時まだ知らなかった。
これから起こる事件のことを…
「はぁ…」
アタシは、顔につけたガスマスクとスコープ越しに町の様子を覗きながらため息をついた。町で一番高いこのビルで3日間は同じことをしているが、なかなか目的のターゲットは現れない。アタシたちとは別に町の方にも2人の隊員がターゲットを探しているが、未だに接触できずにいた。
スナイパーの仕事の9割は待つことだって、昔だれかが言ってたけど…そもそもアタシの本職はスナイパーじゃないし、交代で休憩や仮眠をとっているとはいえ、3日間も何も無いと流石にため息の1つや2つも出るものだ。
「隊長、大丈夫ですか?」
隣でスポッター兼スナイパーをしていた部隊の隊員が、アタシがため息をついたのを見て心配してきた。
「私は全然大丈夫よ、それよりもあなたもターゲットを見逃さないように気をつけなさい」
「了解」
アタシはスナイパーライフルのL96A1を少し構え直し、スコープ越しにターゲットを探す。ここで必ず仕留めてみせると意気込みながら。
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