第322話 全面戦争4

「前へ前へと突き進め〜!!俺達に後退という文字はない!!」


軍団レギオン"戦線騎士団"の副軍団長サブレギオンマスター、オーガニックは仲間達を鼓舞しながら、自身もまた果敢に攻め立てていた。


「くらえっ!!」


「ぬぅん!強いな!……………だが、まだまだよ!」


「ぐはっ!?」


目の前にやってきた"黒天の星"の傘下クランのメンバーを蹴散らしながら、前へと突き進むオーガニック。彼は…………というよりも彼の所属する軍団レギオンは連盟関係にある他2つの軍団レギオンとは圧倒的に違うところがあった。それは………………防御力である。


「ちっ!こいつら、やっぱり硬ぇな!!」


「全く……………噂通りの防御力だな」


「中でも副軍団長サブレギオンマスターのオーガニックがやべぇ。"鉄壁"の異名は伊達じゃねぇよ」


"戦線騎士団"は重い甲冑や鎧などに身を包む重装備の集団である。それによって、今日までどんな敵の攻撃も受け止め、弾き、捌き、いなしてきた。かくいう本人達も自身の強みをしっかりと理解しており、速さを完全に捨てて防御を取ったのだ。そこに至るまでの葛藤や苦難は並のものではなく、今の彼らが形成されるまでの道のりは決して簡単なものではなかった。しかし、それも乗り越えてしまえば得るものは非常に大きい。そこからは彼らに合った戦術を学ぶ日々だった。強者との幾多もの戦い、世界各地を回り、彼らの求める装備を作ることのできる武器・防具職人との専属契約、道中での数々の出会いを経て新たに増えていく仲間達…………………。そして今日、冒険者であれば誰もが知るような軍団レギオンへと成長した彼らは他2つのこれまた有名な軍団レギオンと手を組み、連盟を結成した。これはその記念すべきデビュー戦である。だから、だろうか。彼らからは……………特に幹部以上の者達からは絶対に負ける訳にはいかないという意気込みが感じられた。


「どうした!もう、かかってくる者はいないのか!」


オーガニックは"黒の系譜"の傘下クラン、"守護団ガーディアンシールド"のメンバー達へ向けて言った。今まで彼のこの迫力に押されてしまい、動けなくなった者は数知れず、ほとんどの者達が勝負を挑んで後悔する結果となっていた。ところが、どうやら今回は違ったようだ。


「妙だな?俺の迫力にビビっていないだと?」


ビビる……………どころか、そこら中で笑う者が続出しているこの状況にオーガニックは解せないと言いたげな顔で立っていた。すると、それを見かねた"守護団ガーディアンシールド"のメンバー達は口々にこう言った。


「"鉄壁"、お前の目は節穴か?」


「俺達の親分を一体誰だと思ってるんだ?」


「ふんっ。お前の威圧感などあの方々に比べれば屁でもねぇ」


「まさか、こんなに有名な軍団レギオンの幹部を大したことないと思う日がくるとはな」


「それだけシンヤ様達が強いってことだよな…………やっぱり凄ぇわ、あの方達」


オーガニックの威圧感など、どこ吹く風。彼らは目の前に立つ男を次第に下に見始めた。だが、決して油断している訳ではなく、常に敵に対しては警戒心を解かずにいつでも動けるよう構えている。これは普段からシンヤが口を酸っぱくして言っている"常に油断をするな。強者でも警戒を解いた瞬間、足元を掬われる"という言葉が身体に染み付いている為だ。そのおかげでオーガニックも不用意に彼らを攻められないでいた。


「……………随分と良い教育を受けているようだな」


「それは嫌味か?」


「いや、違う……………って、待て。何故真横から声が……………っ!?」


オーガニックはいきなりの横からの衝撃に思わず、たたらを踏んだ。オーガニックは気が付いていなかったのだ。"守護団ガーディアンシールド"のメンバー達に気を取られ、自分にゆっくりと近付いていた者の存在に………………


「ぐっ……………これはまた先程よりも強い衝撃だ。一体誰が……………っ!?お、お前は!?」


「何だ?俺を知ってんのか?」


「当たり前だ。冒険者にとって、同業者の情報は命そのもの。知っていなくてどうする」


「俺はまだまだ無名だと思っていたんだけどな」


「謙遜はよせ。最近、メキメキと力をつけている"黒天の星"を支える傘下クランの者達……………特に10人のクランマスター達は"十彗じゅっけい"と呼ばれる強者揃い………………その1人がお前だ」


「御大層な紹介、どうもありがとよ」


「"豪傑"オーロス……………いざ尋常に勝負だ!!」


「望むところよ!」


こうして2人の刃が交わった。


「オーロス!負けても心配するな!そん時は我が一瞬で片をつけてやる!」


「ありがとよ!だが、そんなこと言われちゃ、尚更負けられねぇぜ!」


そんなオーロスの後ろにはラミュラと蒼組の組員達という頼りになる仲間達が温かく見守っていたのだった。

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