第320話 全面戦争2
「うん、予定通り……………3分の1程、削れたね」
遠くを見据えながら、第九部隊部隊長ニーベルは呟いた。彼の視力は両目に掛けられた魔力の視力強化により、約100m先までのありとあらゆる事象を見渡せるまでになっていた。これは"黒天の星"の者であれば当然の技術であり、傘下のクランの者達にも日夜仕込んでいたおかげで今では
「ニーベルさん!そろそろオレ達も行きやすかい?」
傍に控えていた
「そう……………だね。ちょうどローズ達も動き出しているところだし………………よし。行こうか」
「了解!……………じゃあ皆さん、いざ進軍開始でございやす!」
「「「「「おぉ〜〜〜っ!!!」」」」」
現場に威勢の良い声が轟く。その中には傘下クランである"威風堂々"の声も混じっていたのだった。
―――――――――――――――――――――
「突き進め〜!自分達の力を信じるんだ〜!」
「「「「「おぉ〜〜〜っ!!!!!」」」」」
味方に力強く檄を飛ばすのは
「俺達があんなぽっと出の連中に負けるはずがないんだ……………」
クライの呟きは誰にも聞こえることなく、空に消えた。そして、こうしている今でさえ、仲間達は次々と敵目がけて突っ込んでいき、迸る闘気を剣に込めて振り下ろさんとする。
「くらえ!……………ぎやあああっ!?」
「くそっ!?一体誰が…………っ!?」
「お、お前はっ!?」
ところが、そうそう上手くいかないのが世の常。彼らは目の前に立ちはだかった少年によって行く手を阻まれたのだ。
「"黒の後継者"クリス!」
「常時"黒天の星"……………特に"黒締"に付き従うクラン、"黒椿"……………そのリーダーか」
「奴こそ、"黒締"の真の後継者と言われる男だ。冒険者ランクもSだ。侮るなよ、お前ら!」
"赤き剣群"の面々は警戒を崩さず、武器を構え、敵をしっかりと見据えて出方を窺う。そこへゆっくりと平常心で近付いていきながら、クリスはこう言った。
「我々に喧嘩を売ったというのはあなた達ですか……………さて、シンヤさん達に剣を向けるというのであれば………………」
クリスは鋭い眼光と共に愛刀を抜き放ち、それを"赤き剣群"へと向ける。その瞬間、クリスから放たれた殺気に彼らは思わず、硬直してしまった。
「生きて返しはしませんよ?」
直後、クリスの振り下ろした軍刀の一撃は凄い勢いの斬撃となり、大地に亀裂を走らせながら、そのまま一直線に進んでいく。
「「「………………」」」
唖然とする面々を尻目にクリスは再び軍刀を振りかぶる。この時点で既に彼らの傍らには約100名もの屍が存在していたのだった。
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