第319話 全面戦争
「くぁ〜……………ありゃ凄い数だな」
広い平原の向こうから駆けてくる軍勢を見ながら、カグヤはそう口にした。
「なんて呑気な……………これは戦争ですよ」
「……………そういうお前だって、呑気に武器の手入れしてんじゃねぇか」
苦言を呈してきたクーフォを半目で睨みながら、カグヤは言い返す。しかし、そんなカグヤの反論を軽く無視したクーフォは遠くを見つめて呟いた。
「本当に懲りないですよね。何で次から次へと喧嘩を売ってくる奴が後を絶たないんでしょうか?」
「そりゃそうだろ。アタシらはある者にとってはデカい金脈、またある者にとっては目の上のたんこぶだ…………………良い意味でも悪い意味でもこんな目立つ存在が狙われないと思うか?」
「そういうもんですかね?」
「お前は内側にいるから、分からないんだ。一回、冷静に外から"黒天の星"もしくは"黒の系譜"という組織を見てみろ……………たぶん連中の気持ちが分かるぞ」
「へ〜…………………っと、カグヤさん」
「ああ、分かってる………………あ〜こちら、第一部隊部隊長兼指揮官のカグヤだ。第ニ部隊〜第十部隊に告ぐ。後衛組はただちに部隊長の指示に従い、行動せよ。繰り返す。後衛組はただちに部隊長の指示に従い、行動せよ………………よし、じゃあ」
「私達はこのまま待機ですね?」
「ああ……………奴らがここ本陣に乗り込んでくるまではな」
―――――――――――――――――――――
「予想通りだな。奴ら、呑気に談笑しているな」
「ふんっ。緊張感の欠片もない奴らめ」
「そんじゃ、さっさと殲滅するか」
「今、通信が、入った。後衛組は、用意、して」
ノエの号令によって、無駄のない統率の取れた動きで準備を始める者達。
「ノエさ〜ん。隊列は〜?」
「ん〜……………"5ー3ー3"で、いい」
そこにリームの間延びした声が響き、他の者達はそれに対するノエの返答に耳を傾けた。現在、幹部である"十人十色"はそれぞれの担当する組の者達……………だけではなく、傘下も1つずつ受け持ち、それが1つの部隊となっていた。部隊長を"十人十色"のメンバーが務め、第一部隊の部隊長であるカグヤの部隊は全体の総指揮も担っている為、全体を見渡せる最後尾に構えている。そして、あらかじめ緊急時に備え、
「用意、できた?」
「は〜い。大丈夫で〜す!」
「僕達も大丈夫だよ!」
ノエの確認にリームとクラン" "風神"のクランマスター、ウィンが返事をする。基本的に傘下達のクランメンバーの数はそれぞれ40〜50名と多く、彼らだけでも陣形は作れるのだが、万全を期して必ず"黒天の星"のメンバーを最低2名は一緒に組み込むようにしていた。現にウィンも銅組の組員に囲まれている。
「よし。それじゃあ……………放て」
―――――――――――――――――――――
「な、何だあれは………………」
「凄い数と質量」
「まるでこの世の終わりだな」
異変に最初に気が付いたのはそれぞれの
「うわああああっ〜!?」
「ぎやああああっ!?」
「熱ぃよぉ!」
「冷てぇ!?」
「あばばばばっ!?」
"赤き剣群"総勢800名、"殲滅連合"総勢1000名、"戦線騎士団"総勢1500名からなる大規模な軍勢は総勢800名の"黒の系譜"に対して、数の面でいえば圧倒的なアドバンテージを誇っていた。しかし、数が多ければその分、デメリットもある。そのことを彼らは忘れていたのだ。
「全軍、倒れた味方に気を取られるな!どんなに悲しくとも彼らの屍を超えて、前へ前へと突き進め!!」
規模が大きくなればなる程、的もその分、広くなる。今の先制攻撃により、"赤き戦線騎士団"は実に1000名もの仲間達を失ったのだった。
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