第235話 奇襲
ローズの故郷である"スニク"。ここは普段、見えない結界により、外部からの侵入を許さない隠れ里となっている。しかし、こと今日に限って言えば、それは例外であろう。何故なら、いきなり里の近くに現れた白い修道服を着た集団がどうやったのか、里の場所をピンポイントで見抜き、あろうことか結界を特殊な武器で以って破ってしまったのだ。
「まさか、こんなところに隠れ里があるとはな」
「ぐふっ………」
異変に一瞬で気が付いた門番のジェイドはもう1人の門番に里中へ危険を知らせに走らせた。そして、その間、彼は無言で近付いてきた集団へ帰還を勧めたが、これを拒否される。その後、何とか穏便に事態を収束させようと他の方法を模索していたところ、いきなり集団の1人に斬りつけられ、それを皮切りに次々と攻撃を加えられた。彼は思った。こんな危ない集団を里へ入れては絶対ダメだと……………そうして意地と持ち前の戦闘センスにより、どうにか現在まで耐え忍んでいたという訳だった。
「さて、時間が掛かりすぎたか。ではここを通してもらおう」
「いい加減、くたばりやがれよ死に損ない〜」
「次はどこを責められたいんだ〜」
「ぐっ…………はぁ、はぁ。誰がお前達のような危ない連中を里へ入れるか」
「命が惜しくないのか?」
「へっ……………くたばるのはお前達の方だ」
「俺はつまらない冗談は大嫌いだ」
「お、クロスさんがお怒りだ」
「お前、終わったな〜」
部下らしき者達の囃し立てる声と共にジェイドへと向かって、2m級の大剣が振り下ろされる。これに対し、満足そうな笑みを浮かべたジェイドは一言こう言った。
「時間切れだ」
「何?」
直後、突風が吹いた。これにより、思わず目を瞑る集団。だが、大剣の勢いは止まらない。集団の多くがジェイドの最期を想像しながら、風が止んですぐに目を開ける。もう剣はジェイドの息の根を止めているはずだからと……………ところが、彼らは思いもよらない事態に遭遇することになる。
「どうやら間に合ったようじゃの」
なんとジェイドと大剣の間に割り込み、杖で大剣を受け止めている人物がそこにはいたのだ。皺がいくつも刻まれ、どこか重厚な雰囲気を漂わせるその老人は長く使い込まれたであろう杖を持ったまま、鋭い目を敵へと向ける。相当年老いているはずであろうがその力に衰えは見られず、大地へとしっかり2本の足で立つ威容は逞しさすら感じられる。全体的に隙のないその佇まいからは実力者であることが窺え、これには思わず敵も驚きの表情を見せた。
「貴様…………何者だ?」
「ワシはこの里の長老。ただの年老いたジジイじゃ」
「俺はつまらない冗談が大嫌いだ。ただのジジイに俺の剣が受け止められる筈ないだろ」
「はて?随分と自分の力を過信しておるようじゃの。お主の攻撃なんぞ、ワシのような老いぼれでも止められる……………実に軽いのぅ」
「俺にはもう1つ嫌いなものがある……………それは安い挑発だ」
「おっと!」
敵が勢いをつけて大剣ごと後ろに跳んだ。老人はその衝撃で一瞬よろめきそうになるのを堪える。この行動の結果、お互いがお互いをある程度離れたところから視認できるような状態になった。すると敵の大剣使いは老人を強敵として認めざるを得ないと感じ、改めて居住まいを正して、こう言った。
「俺の名はクロス。"聖義の剣"第4部隊の隊長を務めている者だ」
「ワシはシード。この里の長老じゃ」
両者、視線が交差して自然と睨み合う形となる。他の者達は誰1人として、声を発することもなく、事の成り行きを見守ることしかできなかった。
「「いざ尋常に勝負!!」」
そして、今ここに1つの戦いが起きようとしていたのだった。
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