第223話 軍団戦争2

「あれが敵の傘下……………そして、その先頭で横一列に広がって立っているのが"十彗"か」


"碧い鷹爪"の一員である冒険者は目の前の光景に目を鋭くしながら、呟いた。と同時に先程の軍団長レギオンマスターそして、その先頭で横一列に広がって立っているのが"十彗"か」


"碧い鷹爪"の一員である冒険者は目の前の光景に目を鋭くしながら、呟いた。と同時に先程の軍団長レギオンマスターの言葉が脳裏に蘇る。


「いいか?お前ら傘下は敵の傘下を相手にしろ。"黒天の星"は幹部以上はもちろんのこと、一般兵ですら油断はできねぇ。絶対に俺達を助けようなんて馬鹿なことは考えるなよ……………それから、数で上回っているからとはいえ、決して侮るな」


最初にその発言を聞いた時は自分達の信じる軍団長レギオンマスターが何を言っているんだと感じた冒険者。そんな慎重でどうする。いつもみたいに堂々と胸を張って、俺達にかっこいい背中を見せつけてくれよと。しかし、今なら、その意味がよく分かった。


「確か、数では俺達の方が上回っているんだったよな?」


「ああ。向こうの傘下は10。それに対して、こっちは20。倍だ」


「そうだよな……………」


「お前の言いたそうなことは分かる。正直、俺も同じ気持ちだ」


「分かるか?」


「ああ。つまり、こうだろ?なんであいつらは俺達の半分の数しかいないのにあんなに自信満々で立ち、闘志を漲らせているのか」


「まさにその気持ちだ。それとあいつらから感じるプレッシャーが半端じゃねぇ。一体、どんな修羅場を乗り越えてきているんだってくらい」


「こりゃ、うかうかしていられねぇな。本気で潰しにいかねぇと」


「おい………………死人は出すなよ」


「分かってるよ。だが、まぁ俺達にそこまでの余裕があるかは分からないがな」


「違いない」










――――――――――――――――――







「"黒の系譜"の一員として活動し始めてから、初めての大仕事だな」


「腕が鳴ります」


「お前ら、凄いやる気だな」


「そういうお前もな」


「それでも落ち着きは必要でしょ」


「やっと自分達の修練の成果を試せる時がきたな」


「思う存分に暴れていいと言われているし、こりゃいいな」


「心機一転。生まれ変わった俺達を見せてやる」


「この戦いに勝てば、俺達も次のステージに進んだってことだ」


「先輩方、凄いですね……………まぁ、僕も負けていませんけど」


もう1つの方の陣営では敵の傘下を見据えて、"十彗"と呼ばれる傘下のクランマスター達が楽しそうに会話を交わしていた。


「……………敵が動き始めたな。では総員、計画通りに殲滅を行うこと。それではいくぞ!突き進め〜!」


しかし、それも数十秒のこと。敵の進軍開始を見てとるとすぐに武器を構えて臨戦態勢になり、傘下の中でリーダーを務めるギースの掛け声と共に動き出した。








――――――――――――――――――







「お、おい!冗談だろ!?」


冒険者は思わず叫んだ。決して油断していた訳ではない。いくら倍の数で有利だからといって、本番は何が起こるか分からない。敵の戦闘力も未知数。とはいっても今までの冒険者活動で養われた目でおおよそのことは分かる筈……………だが、見積りが甘かった。


「ぐはあっ!」


「うぐっ!」


「くそがっ!」


目の前で次々に斬り伏せられていく仲間達を見て、開いた方が塞がらない。今、自分の見ている光景が果たして現実のものなのか、もしかしたら悪い夢の中にいるのではないか、そう錯覚してしまうほど異常だった。


「どうだ?うちのメンバーは強いだろ?"甲乱"ノズルよ」


声が聞こえ、振り返るとそこには戦場にはおよそ似つかわしくない金髪の美青年がいた。


「"剣聖"ギース…………貴様、一体どんな手を使ったんだ」


「ん?俺達はただただ剣で斬っていってるだけだぞ。まぁ、クラン名が"剣の誓い"っていうぐらいだ。うちには剣士が多いからな。それにしてもお前ら…………何て言ったっけ?……………あぁ、思い出した。"亀の甲羅"か。随分、脆い装備なんだな。重そうな鎧をつけてるから、てっきり硬いのかと思ってたぞ。ただの厚着じゃん。ここ、そんなに寒いか?」


「んな訳ないだろ!うちは全員、アイアンタートルの素材を使用した鎧を着ている。うちのが脆いんじゃない。お前らの剣の斬れ味が良すぎるんだ!それから、俺達のクラン名は"竜甲軍"だ!一文字しか合ってないじゃないか!」


「いや、アイアンタートルの鎧を着ているなら、"亀の甲羅"って名前の方がいいだろ。改名しろよ」


「貴様にそんなことを言われる筋合いはない!ふざけやがって!」


「それもそうだな。なら、俺が勝ったら改名してもらうとするか」


「貴様なんぞには絶対に負けん!」


「"王剣山"!」


「"巨盾受け"!!」


大振りの剣による一撃と体を覆い尽くす程巨大な盾がぶつかった瞬間だった。

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