第219話 笛吹き
他種族が多く入り混じる街ワプロ。ここは異文化の交流が盛んであり、種族の隔たりなく皆仲良く暮らしている。その為、毎日のように旅の者や観光客が訪れ、商売人にとっては非常に生活しやすい街となっていた。また近くに迷宮があることから冒険者の数も多く、高ランク冒険者が姿を見せることもしばしばあった。そして、それはこの日も例外ではなかった。
「オレはヒュージといいやす。この街には今日、初めて来たので一応ご挨拶をと思いやして」
「黒の衣にその巨体………………もしかして"黒天の星"の!?」
「はい。そうでやす」
「し、少々お待ち下さい!ただ今、ギルドマスターをお呼び致しますので!」
「ゆっくりで結構ですぜ」
「おい、あれ」
「ああ。受付嬢が驚くのも無理はねぇ。あれは"黒天の星"のメンバー、"巨腕"のヒュージだな」
「橙組組長様が何だって、こんなとこに…………」
「さぁな。ただ何となく観光って訳じゃなさそうだぞ。他のメンバーも見ろ」
「"流水"に"氷砕"、"獣剣"までいるな。確かに休暇中って感じでもないか。ってか、冷静に考えてあいつらが1つのクランに入って、それも幹部ですらなく、一組員とかヤバいな」
「今更すぎる意見だな。まぁ、それも仕方ないだろ。なんせ上の層が厚すぎる」
「寝首を掻いてやろうとか思わねぇのかな?元々ソロで冒険者やってた奴なんて自我が強そうな感じがするが」
「だよなぁ。入っていきなり組長を1人でも倒せば、昇進できるかもしれねぇし。それが幹部ともなれば、大躍進だからな。まぁ、ただ」
「ただ?」
「組長は鬼のように強く、幹部は次元が違う。さらにその上ともなれば、大国を多数相手にする方がマシだと聞いたことがあるな。実際に奴らの戦いぶりを見た奴がそう言っていたらしい。まぁ、実績もあるしな」
「ひぃ〜怖っ!関わらないようにしよ。でも、あそこにいる"巨腕"は温厚そうだけどな」
「だが、怒らせるととんでもないことになるらしいからな。以前、しつこく絡んでた冒険者がそれで吹っ飛ばされたみたいだ」
「へ〜気をつけよ」
「待たせたな」
「いえいえ」
ギルドマスター室へと迎え入れられたヒュージは恐縮しながら、ソファーに座った。他のメンバーは後ろに立ち、2人のやり取りを見守っている。
「私は冒険者ギルド ワプロ支部のギルドマスター、タイタンだ。よろしく」
「クラン"黒天の星"、ヒュージです」
「ああ、知っている。後ろに立つ彼らもそこそこ名の知れた者達だな。で、そんな君達がこの街に一体何の用なのかね?」
「実はこの街にクランハウスを設けて、そこを支部としようと思っていやして……………しばらく、この街に滞在する予定なんでご挨拶をと」
「なんと!?支部までとな。そこまで大きくなったか」
「まだ仮段階みたいですけどね」
「そうか。何にしても君達がこの街にいてくれるのは心強いな」
「まぁ、全員が常にいるとは限らないんですけどね。交代で別の場所に行くこともありやすし」
「忙しいんだな……………ところでさっきから気になっていたんだが、君の種族は巨人じゃなかったか?それにしては随分と小さいようだが」
「これはスキルで小さくなっているだけでやす。じゃないと日常生活に支障をきたしやすから。この部屋にも入れやせんし」
「なるほど。普段から、その大きさで行動しているのか。では2つ名の"巨腕"とは?」
「あぁ。それはしつこく絡んできた冒険者を追っ払う際に腕だけを巨大化させたからだと思いやす。それをたまたま見ていた人がいるんでしょう」
「なるほどな……………ん?」
その時、扉をノックする音が聞こえ、皆の視線がそこへと向かう。ギルドマスターは一瞬顔を顰めたが、ヒュージが気にしていないのとむしろ自分達のことはいいから早く対応してあげてくれと言われた為、入室を許可した。するとそこにいたのは……………
「お話のところ、失礼致します。どうやら、こちらに"黒天の星"の方々がいらっしゃるとのことで参りました」
「お前は……………」
SSランク冒険者であり、クラン"愉快な
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