第208話 締結

「はい……………以上で同盟の締結が完了致しました。そして最後に再確認とはなりますが、この書類にサインして頂いた時点で相互扶助・領土不可侵といった内容に違反する恐れのある行動または裏切り行為を同盟相手に行った場合、魔法による拘束力が働き、その場から1歩も動けなくなるくらいの激痛が襲いかかります。それによっては最悪の場合、死に至るケースも。なのでお気を付け下さい。まぁ、シンヤさんに至ってはそのようなこと、万に一つもないとは思いますが」


「了解。お前もご苦労さん」


「いえいえ。僕のしたことなどそこまで大したことではございません」


「いや、これほどの数のクランを回って書類にサインしてもらったんだろ?随分と大変だったんじゃないか?」


「確かにシンヤさんと同盟を結ばせて頂くクランは僕のところだけではありません。しかし、ほとんどが僕の顔馴染みの信頼できるクランで話はすんなりと通りましたし、それ以外のクランにしてもしっかりと信用できるかどうか判断してから、サインしてもらったのですが時間はそんなに掛かっていません。なにせ皆さん、"むしろこちらからお願いしたいくらいだ"と口を揃えて仰っていましたから」


「そうか。お前が代表者として来てくれて良かった」


「お褒めに預かり光栄です。まぁ、それにしても驚きましたよ。結局、同意して頂けるんですもん」


「同じだよ」


「はい?」


「お前が俺を試していたように俺も"俺を試すお前"を試していたんだ」


「これは……………恐れ入りました。して、結果は?」


「……………聞かなくても分かるだろ?」








――――――――――――――――――







「お、王様!至急、お伝えしたきことが!」


「何だ、騒々しい!今、やっと軍の編成が終わり、これから我が兵士を亡き者にした化け物とやらの正体を暴こうという時に!」


「そ、その化け物なのですが……………」


「ん?何だ」


「ただいま王城前に現れ、"自分こそが兵士を亡き者にし、ファンドランの暴虐から勇者を助けた張本人だ"と宣言しながら、城を斬りつけ一部を破壊しました」


「何!?ノコノコと自分の方から来たのか!?」


「はい」


「ん?今、"自分こそ"と言ったか?まさか、敵は1人ではあるまいな?」


「はい」


「それはそうだろう。いくらなんでもたった1人で国家へ喧嘩は売るまい」


「2人です」


「…………は?」


「け、決して虚言は申しておりません!敵は2人で来ていて、うち1人が先程の内容を宣言したのです」


「そんな馬鹿な話があるか!兵士に手をかけ国家の宝である勇者を攫ったのだぞ!そんな大それたことをたった1人でしたと言うのか!」


「そうみたいです」


「呆れるわ。それが嘘か本当かどっちにしても大物に間違いはない……………ん?ちょっと待て。2人のうち1人がその大物であるとするのなら、もう1人は一体何者なんだ?」


「それは分かりかねますが」


「お前、先程その現場にいたのか?」


「はい」


「ではそのもう1人とやらが何か不審な行動は取っていなかったか?ほんの些細なことでもいい。思い出してくれ」


「………………あ。いや、でも」


「思い出したか?どんなに小さなことでもいい。申してくれ。何がヒントになって人物の特定に繋がるか分からないからな。」


「り、了解致しました。ではご報告致します」


「申してみよ」


「1人が"自分が犯人だ"と宣言している中、もう1人は」


「ふむふむ」


「眠たそうに欠伸をしていました」


「………………さ、些細すぎるわ!どんなことでもとは言ったが限度があるだろ!欠伸くらいワシだってするわ!もっと他に気が付いたことはないのか!」


「いや、他の情報といいますと桃色の長髪に頭上を黄色のリングが浮いている白い翼の少女と紫色の短髪に頭から反り返った角と先が鏃のようになっている尻尾がお尻から生えている黒い翼の少女の2人組であるということぐらいしか……………」


「いや、思いっきり目立つ特徴があるじゃないか!何故それを早く言わない!」


「すみません。今、思い出しました」


「もうよい!そんな特徴の人物といったら、あれしかおるまい。ちなみにそやつらの服装は?」


「黒衣を纏い、桃髪の方は大剣を装備していました」


「やはりな。噂で聞いた通りの特徴じゃ。それにしてもとんでもない相手が針にかかったもんだ」


「いかが致しましょうか?」


「とりあえず、現場へ向かう。まだ奴らはそこにいるな?」


「おそらくは」


「ふんっ!今に見ておれ。ワシに喧嘩を売ったことを後悔させてやる」

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