第203話 従魔部隊
「みんな、揃ってる?」
「「「「「「はい!!!!!!」」」」」」
とある日の昼下がり。絶望の森内にて、円卓を囲む面々がいた。遠目からでもはっきりと視認できるほど目立つ彼らはクラン"黒天の星"の従魔部隊である。そこではグリフを筆頭とする魔物達が大人しく座っており、隊長の次の言葉を待っている。しかし、ここで1つ問題があった。隊長であるリースと副隊長のセバスは彼らを暖かくとても優しい表情で見つめながら、本日こうして会議が開かれた訳なのだが………………どういう訳か若干の緊張感が漂っているのだ。様々な種の体格の大きな魔物達が揃ってビクビクしている様は異様ではあるのだが、それにはちゃんとした理由があった。あれはリースとセバスが従魔部隊に配属されて、1週間が過ぎた頃だった。なんと事件が起きたのだ。最初こそ、リース達に良く思われたいと頑張っていたグリフ達。というのも初めて会った時から、何故かは分からないがリース達に対して不思議と安心感のようなものを抱いていたのだ。それはまるで自分達のことを優しく包み込んでくれる母の愛のようにも感じられ、リースの脇に控えるセバスからも非常に好ましい空気が漂っていた。ところが、その雰囲気にも徐々に慣れ出してきたそんな時だった……………事件が起きたのは。ある日、いつものように会議をしているとリースが配属される前では日常茶飯事だった喧嘩が起きかけた。グリフ達は自分こそがシンヤの役に立つ存在だと訴え、口論となり、やがては武力行使へと移行する寸前までいった。ところがそんな矢先、彼らが1歩も動けなくなるほどの殺気がその場を支配しだした。これに驚き恐怖した彼らは恐る恐る顔だけを錆びた機械のように少しずつ動かしていくとその発端となる場所に座っていたのだ…………………笑顔で彼らを見つめるリースが。そして、小さな声で言われたある一言によって、背中を冷たい何かが走り抜けた彼らは急いで居住まいを正し、これからは仲良く有意義な会議をしようと決めたのだった。
「さて、じゃあ今日の議題を………セバス、お願いできるかな?」
「かしこまりました。本日の議題ですが…………それに移る前にまずは全クランメンバーに共通の伝達事項からお伝えさせて頂きます。かねてより検討されていた他の都市や街に新たなクランハウスを設ける計画ですが、これがいよいよ本格的に始動するようです。それに伴い、クランメンバーが分散され、我々従魔部隊もそれぞれ1名ずつ向かうこととなりました。簡単に言えば、新たなクランハウスが支部となり、そこにクランメンバーが組ごと、我々が1名ずつ常駐する形となります」
「そうなると支部が最低でも10以上ってことになるね」
「な、なんと!?」
「まさか!?」
「そ、そんなに!?」
「流石はシンヤ様!」
「未来永劫、ついていきます」
「幸せだ」
「常駐とは言っていますが何も一生そこにいなければならないという訳ではなく、基本的に好きな時にフリーダムのクランハウス本部へと帰ってくることができます」
「傘下のクランへは?」
「既に通達済みとのことです。ちなみに彼らは支部・本部問わず、訪問することが可能なので別の土地で出会うこともあるでしょう」
「随分と融通が効くね」
「まぁ、それもこれも…………」
「?」
「全ては"
「「「「「「!!!!!!」」」」」」
「ここにきて急にか。何か心境の変化でもあったのかな」
「さぁ。あの御方は常に我々の想像の遥か上を行きます。それについて考えても仕方のないこと」
「そうだね。僕らが考えることっていったら……………」
そこで全員を見渡したリースはこう言った。
「僕達がこのクランの為に一体何ができるのかってことだけだ」
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